第86話 王城1


 イチローがロッフ商会と揉めていた頃、王城でも一悶着あっていた。


クラウス「シャールが戻ったのか!!」

国王が席を立って叫ぶ。


ルアナ「貴方、落ち着いて。」


クラウス「これが落ち着いていられるか!!宰相どもが病気が感染るなど言って、ワシからシャールを引き離したくせに!!!」

ワザと周りに聞こえる様に声を荒らげる。


コンスタンティン「父上、気持ちは分かりますが、皆が動揺しますので‥。」

横にいた第一王子が父親を戒める。


クラウス「わかった‥。それでシャールは何処にいる?」


騎士「別室で待機されています。面会を望まれていますが‥、宰相様が先に会うことになっております。」


クラウス「なぜ、父親より先に宰相が会う必要がある?」

国王が騎士に向けて殺気を飛ばす。

跪いている騎士はガタガタと震え出す。


ルアナ「貴方、それぐらいにして下さい。その騎士を責めると可哀想です。それにメイベルが動いていますから、大丈夫です。」

王妃の言葉を聞いて、国王の怒りがおさまる。


クラウス「メイベルが動いてくれたか‥。」


コンスタンティン「アイツは妹の事となると見境が無くなるから‥。とりあえず任せましょう。」




その頃、シャールは国王に面会を求めたが別室で待機させられていた。

しかし客室と呼ぶには相応しくない質素な部屋であった。


シャールは焦っていた。

早くお姉さまに知らせないといけないのに

‥。


宰相もまた焦っていた。

カスト「本当にシャール様、本人なのか?」

騎士「王家の証もありましたので間違いないかと。」


どうなっている。

病気が酷くなって、スタットで余生を送るはずではなかったのか?

毒以外にも絶対に死ぬ呪いをかけたのに‥。


こうなったら、偽物として始末するしかないな‥。

カストがシャールの待つ部屋に入る。


カスト「こんにちは、シャール様。何か急いでいるとのことですが何用でしょうか?」


シャール「お父さまに面会したいのですが、何故かこの部屋に待機させられて困っています。」


カスト「国王様は大変忙しいので、ご用件は私が伺いますが?」

カストは笑顔で向ける。


シャール「では、お兄さまかお姉さまに会わせて!」


カスト「残念ながら、お二人とも公務でこの城にはいません。」


シャール「そんな馬鹿な!お母さま?」


カスト「王妃さまも公務で‥。」


シャール「もういいです!!お父さまを待ちます!」

シャールが激昂して、机を叩く。


カスト「もう結構です。偽物は消えて下さい‥。」

カストは隠していたナイフでシャールに斬りかかる。


シャール「やっぱり、あなたもなのね‥」

シャールは驚きながらも、カストの攻撃を避ける。


カスト「このナイフには即効性の毒が塗られています。今度こそ、あの世に送って差し上げますので、ご覚悟を。」

カストがシャールに斬りかかろうと構えると、外で物凄い物音が響く。

二人が扉を見ると、鉄の扉が斜めに切断されるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る