第74話 襲来2


 私は今よりずっとずっと昔、1人の男を好きになった。

まだ生まれたばかりで小さく弱かった私は、人間の作った罠にハマって動けなくなっていた。その時助けてくれたのがその男だった‥。

怪我をして動けなかった私に、食べ物をくれ傷が癒えるまで面倒を見てくれた。

そしてあの日いつもと違う食べ物をくれた。私にはその時、疑うということを考える余裕はなかった。

いつものように身体を撫でてくれていると、身体が痺れて動かなくなった。

何かの病気かと彼に助けを求めると、事もあろうに彼は私を縄で縛った。

彼は言った。

最初の罠は別の猟師のもので、彼はそれを横取りしたのだ。

しかも助けたフリをして傷を癒やし、生捕にし、私を売ると‥。

無傷の子竜は高値で売れると楽しそうに語ってくれた。

私は助けて欲しいと何度も叫んだが、うるさいと口に猿ぐつわをはめた‥。


その後、助けに来た家族に救われたがその男の姿はどこにもなかった‥。

私は男を探した。

数年後、人化出来る様になってからも探し回った。

そして私は彼を探し当てた。

もしかしたら何か事情があったのではと思いたかった‥。

それから彼に近づき交流をもつようになり、ある時酒に酔った彼は自分で昔話を始めた‥。

バカな子竜がいて、罠で動けけなくなったのを奪ってやると懐いてきたと。

助けるつもりは無かったが無傷の子竜は高値で売れるので我慢して介抱してやったら、最後まで俺を信じてピーピー鳴いて煩かったと笑いながら話した。

もしかしたらと言う淡い期待を砕かれてしまい、頭が真っ白になった。

その後気がついたら、辺りは焼け野原になっていた‥。


人間はすぐに騙す。

だから信用出来ない。

娘も騙されて奴隷にされている。

私が助けてあげないと‥。

すぐに人間を殺して解放してあげるから待ってて。

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