第9話 初戦闘


一郎と雪花が森に囲まれた道に歩いていると、物音や鳴き声は聞こえないのに、なんとなく、何かの動物がいる気配がした。しかも感情もわかるようで、明らかに敵意を感じた。


「雪花、何かいる。気をつけて」

「わかりました、旦那様」雪花が身構えると、角が生えたうさぎが飛び込んできた。

「氷爪」

雪花の手から氷の爪が飛び出し、うさぎの体を切り刻んだ。

「まだくるよ!」

俺が叫んだ瞬間、一匹が俺を狙って飛び込んできた。

「氷壁」

雪花が叫んだ瞬間、氷の壁が俺とうさぎの間に突如現れた。空中にいた、うさぎは避けることも出来ず、氷の壁にぶつかり動かなくなった。

さらに10匹以上の気配を感じた。

「まずい!囲まれてる!!」一郎が情けない声をあげた。

「大丈夫です、旦那様。任せて下さい」

「吹雪」

雪花が叫ぶと、辺りに吹雪が舞った。


周りから何の気配がしなくなったので、一郎が目を開けると目の前には全てが凍りついた世界があった。

木も草花も全て凍りついていた。俺の嫁さんコワ!


「もう大丈夫ですよ」

そう言いながら雪花が氷の爪を消した。


結局、30匹のうさぎを倒していた。もちろん全て雪花に解凍してもらい、収納している。


それにしても雪花は強いなぁ。このままだと足を引っ張るだけだから、せめて自分の身は自分で守れるようにしないと。


それから1時間ほど歩くと森を抜けた。その後もうさぎの襲撃は続き、最終的には55匹にもなった。いや、この森うさぎ多すぎ。もしかしてスタンピート的なやつ?

俺、スローライフをしたいんだけどなぁ‥。


移動中、喉が渇いた。近くに川などはなく、仕方なく我慢していたら、雪花が氷のコップにみぞれを入れて渡してくれた。ほんと良く気がきく嫁。冷たすぎて、ちょっと歯にしみたけど、それは愛嬌。今後、水の確保など考えなくてはいけないなぁ。収納はあるが出来れば水を出せる妖怪をゲットしないと。


考え事しながら歩いていると街ついた。

さて、異世界からきた俺たちを入れてくれるかなぁ。テンプレでは、門番に止められて身分証を求められて、持っていない場合は犯罪歴を調べられて、仮身分証を発行する流れになるんだろうと身構えていたが、特に止められずに、すんなり街に入れた。

「セキュリティ低!」


ついでに門番さんに街のことを聞いた。この街はスタットという街で、人口は3万ぐらいのとのこと。人間以外にも獣人やエルフ、ドワーフなど様々な種族が住んでいるらしい。ちなみに看板の文字も読めたし、会話も出来た。たぶん神様のおかげだと思う。「ありがとう、神様!家、建てたら祭壇でも作って、お供物するから!!」改めて、神様に感謝するのであった。


そういえば、魔法に鑑定ってあったけど試してなかった。ちょっと試してみるか。


「雪花のこと鑑定して見たいんだけど、いいかな?」

「旦那様、私達は夫婦ですので、わざわざ確認しなくても、いつでも見ていいですよ。」

「ありがとう、じゃー早速見てみよ。」

「鑑定」


すると頭の中にメッセージが流れてきた。「鑑定には、上級、中級、初級とありますが、どちらにされますか?」

え?鑑定って選べるんだ。まぁ、初めてだし、「中級でお願いします。」一郎が選ぶと雪花のステータスが表示された。


【名前】雪花

【年齢】21歳

【種族】妖怪(雪女)

【夫】イチロー

【経験人数】0

【スリーサイズ】78・57・83


【スキル】氷

【妖術】氷爪・吹雪・氷壁・氷槍・つらら・氷霧・氷作成・***・***・***

【魔法】

【持ち物】*****


経験人数って‥、鑑定はんぱねー。中級でこれだと上級は怖くて使えない。封印しとこう。


「旦那様、私のステータスはどうでした?ちゃんと見れましたか?」

「うん、見れたよ。ありがとう!」スリーサイズとか見ちゃたので、気まずいので話題をそらそう。


異世界テンプレでは、ここで冒険者ギルドに向かうんだよなぁ。まぁ、うさぎを売りたいから向かうことにした。


さぁ、やってきました冒険者ギルド。デッカい看板には剣と盾の絵が描かれていて、木造3階建ての立派な建物だ。


入った瞬間、先輩冒険者から絡まれるかも。正直、怖い。かなり怖い。

ビビりながらギルドの中に入ると、いろいろな話をしていた人達の視線が全て、俺と雪花に向けられた。


なにこれ、コワ!

何でこっち見てるの?

どうも視線が首より下を見ているような‥。

あっ、しまった!俺、スーツのまま転移したんど。しかも、雪花は着物。

わぁー、これは目立つよな。でも入ってしまったので、後には引けない。とりあえず手の空いてる受付嬢さんを探す。


何だろう、みんな目線を合わせてくれない。どうしようかと悩んでいると、一人の受付嬢さんが話しかけてきた。


「異国の方が、冒険者ギルドに何か御用ですか?」

「異国から来たって分かるんですか?」

「お二人とも見たこたもない服装してますので、異国からこられたと判断しました。」

そりゃー、異世界にスーツと着物だもん。他所から来たってすぐにバレるよな。

とりあえず適当に誤魔化すか。


「東の方にある、ものすごく遠いとこからきました。ここに来る途中、角のあるうさぎを捕まえたので、ここで買い取ってもらえないかと思いやってきました。」


「東というと、オオストですか?」

「いえ、もっと遠いジャポネというところです」

受付嬢さんが、じっと目を見てくる。何か心を覗かれているような気がしてきた。

それにしても綺麗な女性だよなぁ。制服も似合ってるし、キャリアウーマンって感じ。こういう女性に憧れる。って、なんか寒くなってきた。嫁さんから冷気が出てるような‥。嫁さんコワ!!


「嘘は言ってないようですね。よけいな詮索をしてしまい、失礼しました。」

受付嬢さんが、頭を下げてくる。

「いえいえ、お仕事ですから疑うのは仕方がないですよ。それで買取は可能でしょうか?」

「はい、買取は問題ないのですが、一応身分証が必要になります。持ってますか?」


結局、街の入り口でテンプレが発生していないので、仮の身分証もないもんなぁ。


「すみません、今日来たばかりですので身分証がありません。どこか発行できる場所を教えて頂けないでしょうか?」

「お教えしてもいいのですが、ここから遠いですし、発行してもらってから、またこちらに来ることになるので、手間でよね?冒険者登録したら、その手間が省けますよ」

「冒険者登録ですか?でも、依頼受けないと降格したり、指名依頼とかあって、正直面倒くさいようなぁ。」

「よくご存知ですね。確かに降格や指名依頼などありますが、すべてAランクからですよ。しかもAランクになれるのは極々僅かの人だけですよ。なので、気兼ねなく入れますよ。」

「それだったら、なってもいいかな。雪花もそれでいい?」

「私は旦那様の指示に従いますので。旦那様のしたい様にして下さい。」

「了解。では、冒険者になります!登録宜しくお願いします。」

「それでは、登録しますので、まずこの用紙に必要事項をご記入下さい。」

用紙を受け取り記入を行った。名前や年齢ぐらいでスキルなどは特に書かなくていいみたいで、雪花も自分で書いている。


「はい、記入終わりました。」受付嬢さんに用紙を渡すと、奥の部屋に入っていった。それけら5分後、白いカードを持ってきた。

「こちらが、イチロー様の冒険者カードになります。初めてですので、血を一滴、カードに垂らして下さい。」でた、異世界テンプレ。これが嫌だから冒険者登録したくなかったのに。まぁ、仕方がないかぁ‥。針で指先を刺し、血をカードに垂らした。するとカートが一度発行し、持ち主欄に名前が表示された。電気とかガスがないのに、こういうのはハイテクなんだよなぁ。

「これで登録は終わりました。そのカードはイチロー様専用になりました。ギルドカードはお金も貯蓄出来ますので、イチロー様本人にしか使えません。もし万が一にでも他人のを使うとカードが爆散しますのでご注意下さい。また失くされますと再発行には、お金がかかりますので。」

爆散って、コワ!!異世界はやたらと物騒だよなぁ。


「それでは、ギルドの説明をさせていただきます。」

なんか面倒だなぁ、適当に流すか。

「真面目に聞いて下さいね。ちゃんと聞かないと後で後悔することになりますよ。」

やばい、笑顔なのに目が笑ってない。

受付嬢さん、コワ!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る