人見知りな彼女の、恋の仕方
ねこくま
第1章 出会い
プロローグ
【
俺は3月の寒さに震えながら、マッチングアプリを開いてそのメッセージを読んでいた。
今は13時8分。約束の時間は13時。俺が立っているところは指定の駅前。場所も時間も間違っていないはずなのに、真由という人はまだ見えない。
俺は彼女のプロフィールを開き、再度写真を確認する。茶初よりは赤に少し近い髪色の、清楚で大人しい印象の可愛い美少女の写真が目の前に現れた。盛り過ぎたせいか、物凄くぎこちない笑顔をしている写真だった。
顔は盛られているから分からないとして、あの特徴的な髪色の人もいないのは可笑しい。メッセージでちょっとやり取りしたことしかないが、何かあれば的確に連絡する人のようだったので、遅れるなら遅れるとちゃんとメッセージを送ってくれたはずだった。
やはりあんなアプリ、使うんじゃなかったと、後悔が押し寄せてくる。大学2年生になるまで恋愛経験ゼロで、友達に社会勉強という変な理由で勧められたという軽いノリで使うものではなかったのだ。
最後にもう一度確認して、まだ来てなかったら帰ろう。
そう思いながら、俺は周りの女性の髪色だけを確かめていく。大学生っぽい女の子は何人かいたが、髪色が違う。もうあの人はここにいないことにし、帰った方が…。
「…あっ」
いや、いた。
建物の壁に身を隠し、不安げに目をきょろつかせている人が。肩の下まで伸びた髪の女の子が。そしてその顔は、写真を盛るどころか、現実味があってもっと可愛く見える。
彼女はまだ俺に気付いてないようだったので先に近付こうとすると、ピッタリと目が合ってしまう。遠くでも分かるぐらい、彼女の大きい目がもっと大きくなっていった。
彼女は慌てながら携帯を出して何かを確認した後、俺の顔と服装を見てから大きく息を吐いた。その一連の儀式のような過程を経ると、壁から体を出し、ちょんちょんと歩いてくる。女の子らしい可愛いスカートが彼女の歩調に合わせてゆらゆらと揺らぐ。
「
先に声を掛けると、彼女は頬を赤く染めながら、深呼吸を繰り返した。
「はい…。あの、その………は、初めまして!」
それだけで、俺はすぐ分かった。
彼女は、言葉では全てを表せないほどの、極端な人見知りなんだと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます