反動
「ん……」
目を開くと真ん前にうどんの顔。ペロペロと顔を舐められる。うどんを止めようと手を上げるが——
あれ? 身体が動かない?
穴の空いた天井からは、朝日の光が真っ直ぐと差し込んでいる。そうだった。巨大化して倒れたんだった。
「カエデさん、目覚めましたか?」
「ダリ……ア?」
「はい。起き上がれますか?」
「無理」
身体が動かないのは、どうやら巨大化の反動。頭が痛い。身体も痛い。あのキノコ、もう絶対食べない。キノコダメ。絶対。
「だえ~」
「ギンは、いいんだよ」
ギンが、額の上から顔を覗き込む。カサの中までよく見える。ギン、少し成長した?
ギンが出した、水の魔石を口に当ててもらい不思議水を飲むと身体の疲れと痛みは引いていった。
「ふー。楽になったけど、身体はまだ動きそうにない」
「負担が掛かったのです。でも、カエデさんのおかげで助かりました。ありがとう」
「残りのゴブリンは?」
「メスが死んだので、逃げていきました」
ダリアとバンズがゴブリンの耳を集める間、天井を見上げながら身体が復活するのを待つ。
ここのゴブリンは、ログハウス周辺の奴らとは生態も見掛けも明らかに違った。
大ゴブリンもゴブリンライダーも、ここのコロニーにはいなかった。いたのは、メスのマミーと兵隊のゴブリン。蟻のような昆虫なのか、トカゲやヤモリのような爬虫類なのか良く分からない。
分かるのは、こいつら、完全に数勝負。個体個体は、凄く雑魚だけどね。マミーも、あの再生能力が異常なだけで、然程強くはなかった。
マミーがいなくなった今、壁の中のゴブリンは羽化? 覚醒? するのだろうか?
「ダメダメ。これ以上、ゴブリンに関しての知識いらないって!」
それから少しして、身体が動かせるようになった。かざした手をグーパーする。大丈夫そう。
起き上がり辺りを見て後悔。ゴブリン踏み踏みや、マミー剥き剥きの記憶が一気に、そして鮮明に蘇る。
「気持ち悪!」
巨大化ハイ? あの時間は『私、なんでもできる!』錯覚を及ぼす効果でもあるん? 足にべっちょりとついた青緑の血と泥を洗い落とす。
軽く体を拭き、着替える。靴は破れてしまったので、靴下を重ねて履き、叔父さんのもう一つあったトレッキングシューズを履く。少し大きいが、ないよりマシだよね。
ゴブリンの耳集め中の姉弟に声を掛ける。
「ダリアー! バンズー! カエデ、無事復活!」
名を呼ばれたバンズが、ビクッと肩を震わせる。ダリアは平気そうだけどね。小さい子には、トラウマだったよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます