ポートフォリオ

小原光将=mitsumasa obara

1 過去の厭な記憶

 過去の厭な記憶。

 金管のきらめきが悠二を出迎えた。

 正門を抜けた先の、校舎へとつづいていく階段の上に、吹奏楽器とその吹き手たちが隊列を組んで並んでいる。

 彼女たちの背後に建つ殺風景な校舎が目的であった。あるいは、そこには目論みだけが存在して、目的などと言ったものは存在しないかもしれないけれど。

楽しくやろう、と悠二は考えた。しかしその考えは目の前にいる吹奏楽隊のはつらつとした表情が醸しだしている雰囲気が、彼の中に流れ込んでそう考えさせたのだろう。そう悠二は思う。

 日は照り輝いている。その分だけ金管は濡れるように輝いていく。

 悠二が驚いておらず、正門から入ってきたばかりの人々が驚いているのは、その演奏の意味するところに、感じとる上での誤差があったからに違いない。勇演を終えたあとに湧きあがった拍手が、ところどころにひび割れがある鉄筋コンクリート造りの校舎に初めて入ることになる、生新しい人々にも向けられているのが分かる。

 悠二は隊列の乱れに現れた、階段上の間隙を縫うように階段を上っていった。

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