虚数大乱

時塚 有希

序曲 始まりの穴

 2046年、東京都心で。アメリカ、マンハッタンの摩天楼で、エジプトのピラミッドの上で、それは観測された。

 穴、と言うべきなのか、点、と言うべきなのか分からないそれは世界のあらゆるところで観測された。

 そして、それが始まりだった。

 記録によれば、その穴の中から人の形をした、未確認生命体が降り、人類への蹂躙を始めた。降りてきたこの生命体には、現代兵器は一切聞かず、核、水素、そして、実現段階になかった反陽子爆弾をも、ことごとく無力化してしまう。

 大地の6割、人類の9割以上を削られたとき、彼らの世界から流れ出る空気の成分に、人類も変質されたのか、彼らに似た能力を使えるようになった。

 その能力者たちをを、人類は『数司(すうし)』と呼んだ。

 そして、現在。人類は旧北アメリカ大陸の西海岸の一帯に陣地を築いている。

 人類は『数司』として戦える者たちを集めた『数司大隊』と、戦いたくない者たちの『補填大隊』の二つに分かれている。

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