幕間 ベルセング王国の国王
リアムが『炎帝』を引き継いでから数日が経った頃。
「ルーエン国王!」
広々とした玉座の間に一人の男が駆け込んできた。
「ふむ、どうしたカリント大臣」
国王と呼ばれた人は、玉座からカリント大臣を見下ろしている。肘掛けに肘をつき、頬杖をついている。それはまるでまた面倒ごとを運んで来やがったなといった表情である。
カリント大臣は玉座の前に膝をついて頭を垂れる。
「ルーエン国王!報告があります!」
「ふむ、話せ」
カリントは『はっ!』と声を上げてからスラスラと迷いなく話し始める。
「炎帝ロラン・アーガイルが炎帝の称号を後継者に引き継ぎました!」
「な、なんだと!?」
驚きのあまり、ルーエンは玉座から立ち上がってしまう。
「まさか、あの非常識な老人が炎帝を引退したのか?」
「はい、これは間違いありません」
ルーエンは深くため息を吐けながら再び玉座に腰掛ける。
「そうか、あのご老人が引退か。これで少しは私も気持ち的に楽になるな」
「それはなぜでしょうか?」
ルーエンはキッとカリントを睨む。
「カリント、お前はあのご老人のしでかしてきたことを知らないのか!?あいつはこの王城を宿代わりとして使用し、あまつさえこの玉座でくつろいでいたんだぞ!あいつがいては私の王としての威厳が保てないではないか!」
ルーエンはゼェハァと肩で息をする。
「そ、そうでした。すみません、私としたことが」
「まあいい」
ルーエンは再び肘掛けに肘をつき、頬杖をつく。
「それで、話を戻そう。炎帝が後継者へと引き継がれた。そうなると七帝魔導士たち全員が新たな七帝魔導士になったことになるな」
「はい、その通りです。炎帝、氷帝、風帝、雷帝、地帝、聖帝、闇帝。この全ての七帝は全て新たな人物へと引き継ぎを完了したとのことです。そして、今代の七帝は全員が若者とのことです」
ルーエンはまた深いため息を吐いた。
「そうか、全員が若いのか」
そう、若いことはいいことだ。なぜならこれから先、長い間七帝を名乗ることができる。つまり、国王としていちいち挨拶をする機会が減るということでもある。だが、若いが故に血の気が盛んな連中が多くなってしまうことは言うまでもない。そもそも、七帝になる人物は毎回決まって変人が多い。これは先代七帝たちが意図してやっているのか。もし、意図してやっているのなら、頭が痛くなる話だ。
「カリントよ、今代の七帝の性格、容姿などを調べてまいれ!できるだけ情報が多い方がいい。特に、炎帝のことはよく調べろ!またあのご老人同様、常識が通用しない相手だと私の胃に確実に穴が開くからな」
「はっ!かしこまりました!」
「わかったなら行け!」
カリントはルーエンに一礼すると、スタスタと玉座の間を後にした。残されたルーエンは今日何度目かになるため息を吐いた。
「新時代の幕開け、か。どうか、今代の炎帝は常識人でありますように」
この願いを神が聞き届けてくれるのか否か。この場にいる人物には知る由もなかった。
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ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
毎回応援してくださっている方、そして星をつけてくださっている方、本当にありがとうございます!皆様のおかげで異世界日間ランキング39位まで上がることができました。
そして、次話で第一章がラストになります。明後日から頑張って二章の方も投稿していきますので、応援、星の方よろしくお願いします。
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