第20話:作戦会議
「なるほどなぁ。今度は
「んー。そう来たかぁ」
「でも……どうやって……来るんだろ……?」
『最果て駅』で、キュウさん、コウちゃん、トラと今日のダンジョン攻略の顛末を共有する。
今回は、明らかに異質だ。しっかりと対策をしなければ取り返しのつかないことになる……気がする。
「トラは、実際にその『レイン』って奴とは会ってなかったんだよな?」
「そうね。あたしの場合は、『レイン』が命じて黒ジャンパーと黒フードが私を元の世界から拾ってきた感じ。
あんた達を襲う時は、黒ジャンパーが持ってた『指定急行券』を使っただけだからねー。」
「そうだよな。十中八九狙いはゴートの定期券なんだろうが……どんな奴がどうやって奪おうとしてやがるのか」
キュウさんの言っていることは分かる。
今の俺なら、正直そうそう負けることがないだろう。
驕りや慢心でなく、そのくらい定期券が極限まで鍛えられているのだ。
一体、奴らの作戦は……?
「そういえば……昔ちょっかい出してきた……あの指揮者さんも……来るのかな」
「ああ。あの黒い燕尾服の……確か名前は……ホリーって言ってたね」
確かに奴は底知れない雰囲気があった。
今回関わってくる可能性もある。警戒は必要だろう。
「んー。ちょっと、まとめっか!」
そう言って立ち上がったキュウさんは、ホワイトボードをガラガラと引っ張ってくる。
そしてマジックペンで【①:どこで?→蟹名駅】と大きく書く。
「まず、何かが起きる場所はここに間違いない。そんで、ゴートが戦った奴が呼ばれてたんだろ。つまり……」
【②:誰が?】とキュウさんが続けて書く。
そうだ。黒陣羽織ことミナツチさんは、黒い定期券を手に入れて間もなかった。
一人で蟹名駅に来たってどうしようもない。
「他にも黒服達が集まるってことですね。何かするにしても、俺が居る保証も、土地勘も無い場所に呼ばれるんだ。指示役がいないとおかしいです」
「それなら『レイン』が直接来る可能性が高いわ。当時の私はあんた達の名前を知ってたから同じダンジョンに潜り込めたけど、別にあんた達の最寄り駅がどことかは知らなかったからね。
そういう情報を最も握ってる可能性が高いのは『レイン』よ。ダンジョン電車の開発者だもの。あんた達が持ってるような計測装置とかも当然開発しててもおかしくない」
トラがいつもよりも知的に喋ってる……ってことは『変身』スキルで何か頭が良さそうな人になりきってるんだろう。
だが、言っていることはその通りだ。
「よし! じゃ、次だ!」
【③:どうやって?】とホワイトボードに書きこまれる。
そう。これが一番の問題だ。
ダンジョンではない場所になんで降りようとしているんだ……?
「そうだよね……例えばトラちゃんは……蟹名駅の外には出られないよね……? 一回二人で試したけど……改札から先には行けなかった……」
「そーなのっ!! あそこさえ通り抜けられれば、コウの家で少女漫画コレクション読破出来たのにー!」
あっ、これは『素』だな。よくもまあ上手くひょいひょい切り替えられるものだ……。
っと、今はトラの切り替えの上手さよりも考えることが……ん? 切り替える……?
恐ろしい予測が立った。いや……そんなまさか……だが……これなら。
「ゴートくん……もしかして……何か、気付いたの?」
「……うん。あくまでも可能性だけど」
そう、世界そのものを切り替えれば……。
奴らが力を発揮出来て……俺達が不利になる状況……それは。
「あいつら、蟹名駅をダンジョンにしようとしてるかもしれない」
――――「蟹名駅のダンジョン化、ここまでは奴らも気付くはずです」
大量の情報が流れるモニタールーム。ダンジョン電車の路線図が写っている。
そこに三人の黒服の男達がいた。
「気付かせたんだろ? ミナツチさんを犠牲にしてね。レイン君も人が悪いね」
「……どうせ最後には元に戻すからいいんです。それよりもホリーさん、本当に『ガタン ゴウト』に勝てるんですか?」
「ふふっ。どうだろうね。今の彼は強いからねぇ」
黒い燕尾服の男が妖艶に笑う。
「自信がねえなら、俺にやらせりゃいいだろうが」
更に、黒いダッフルコートの男が言葉を被せた。
「いえ、『ガル』さんは思い切り暴れることに専念してください。」
黒いツナギを着た男が釘を差す。
「冗談だ冗談。まっ、弱い者いじめも楽しいからな。久しぶりの『定期券狩り』だ、任せろよ」
「大丈夫だよ。レイン君。僕のスキルは知ってるだろ? そう易々とは負けないさ」
「頼みますよ。他の黒服にも声をかけておきます。数の足しくらいにはなるでしょう」
「それでは3日後、くれぐれも忘れないように」
そういってレインと呼ばれた男はモニタールームから出ていく。
「……あいつ、随分と余裕がなくなったな。始めの頃はもっと活きがいいガキだったと思うが」
「計画も大詰めだろうからねぇ。そして、ガルくんも気付いてるだろうけど……何かを隠してる」
「……そうだな。まあ別にいい。俺はただ言われたことをするだけだ」
「ふふ。そうだね。お互い、消えないように頑張ろうか」
――――「なるほど、確かにそれはあり得る。いや……それしかないかもしれん」
キュウさんが神妙な顔で頷く。
「……もしかすると、お母さんも……それで……」
そう、奴らがもし、能動的にダンジョン化させる術があるなら……。
「うん。現実世界での『定期券狩り』、それはこの手法なら可能かも」
「よし! 後3日ある! 出来ることはやろう! 俺は本部に連絡する!」
「それなら、あたしの世界が呑まれた時のこと教えるよ。多分似たようなことが起きるかもしれないから」
「うん……トラちゃん……お願い……。でも辛いと思うから休み休み……ね?」
こうして、決戦に向けて大きく事態は動き出した。
3日後、蟹名駅で俺達は激突する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます