ダンジョン電車 ~俺だけの『スキル合成』でダンジョンを攻略して、寿命残り約2年から生き延びる~
@nemotariann
前編
プロローグ:ダンジョン電車
「次はー迷いの森駅ー迷いの森駅ーお降りのお客様はー……」
車内のアナウンスで眼が覚める。ここは初めて聞く名前の駅だな……。電光掲示板に目を向ける。
『迷いの森駅 Fランク』。俺には丁度良いランク帯だ。今日はここで稼ぐか。
手元の『定期券』を確認する。今日のスキル構成の見直しだ。
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見習イ魔法使イ⇔見習イ剣士
経由 小サナ幸運
1-3-12 まで
ガタン ゴウト様
―――――――――――――――――――――――――――――
扉が開く。俺は立ち上がり、下車をするのだった。
突如として日本に現れたダンジョンへと誘う謎の電車。
なんでもない普通の駅から特別な『定期券』を改札に通すと乗れるその電車は、気まぐれにあらゆるダンジョンを巡る。
この『ダンジョン電車』のルールは簡単だ。
寿命と引き換えに期限付きの『定期券』を発券する。ダンジョンをクリアすれば期限は伸びる。失敗すれば期限は縮む。そして期限が無くなれば死が待っている。
とはいえ、それ自体はそこまで恐ろしいものではない。普通は、ほぼ寿命通りの期限となるからだ。
ところが俺は違った。
一年前、興味本位で発券した定期券には恐ろしい事が記されてあった。
―――――――――――――――――――――――――――――
2-2-2 まで
ガタン ゴウト様
―――――――――――――――――――――――――――――
目を疑った。つまり、あと2年と2か月と2日で俺は……死ぬ……!?
その日から生き延びるためにダンジョン攻略を始めたのだった。
剣を振るってスライムを斬り飛ばす。予想通り、Fランクダンジョンなら問題なく攻略できる。
森の奥深くに入っていった瞬間、ジリリリリリリリリリリリリリリリリとけたましい音がなる。ダンジョンボスのお出ましだ。
木の化け物が大きく伸びた2本の枝を手足のように操り、攻撃を仕掛けてくる。
それを剣で捌きつつ、炎魔法で応戦する。
スキル『見習イ剣士』と『見習イ魔法使イ』をセットしてるので俺はそれなりの剣術とそれなりの魔法が扱える。このボスとは相性が良さそうだ。
更に炎を放ちボスが怯んだ一瞬を見逃さなかった。
「そこだっ!!」
剣に炎を纏わせて、思いっきり木の化け物を貫く。会心の手ごたえ。パッシブスキル『小サナ幸運』のおかげかもしれない。
勝利を確信し、剣を引き抜こうとした時、突然左右から枝が俺を抱きしめるように迫ってきた。
しまった! 相打ち狙い!? ……くそ! やるしかない!
俺は定期券を剣の柄の上部に差し入れた! その瞬間、剣が輝く!
「うおおおおおおおおおおおっ!!!」
突き刺した剣をそのまま横なぎに一回転。向かってきた枝も右も左も全てを一刀で切り伏せた。
今度こそ勝った。木の化け物はサラサラと砂のように崩れ去り、その奥には駅が出現した。
これで、ダンジョンクリア。さて、ご褒美の時間だ!
俺はウキウキと駅の券売機に定期券を通す。すると、報酬画面が表示された。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
期限:0-1-0 スキル:迷イノステップ アイテム:ウッドソード
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ううん……。微妙だ。伸びた期限はたった一か月だし、スキルは回避率微増のパッシブスキル。アイテムに至っては実質木の棒だこれ。
落ち込んでいても仕方ない。俺は駅の無限ロッカーに木の棒を押し込んでダンジョン電車に乗り込んだ。今日はあともうひとつくらい攻略出来そうだ。
ガタンゴトン……ガタンゴトン……。電車に揺られながら、膝に乗せてる俺の唯一のレアアイテムである剣を眺める。
レアアイテムには例外なく定期券の差し込み口がある。そこに定期券を入れることで真の力を行使できるのだ。
この剣であれば柄の上部に差し込むことで、剣が羽のように軽くなり、切れ味は跳ねあがる。ただし、一振りするだけで期限を1日消費する代償つきだ。
「生き延びるためには節約もしなくちゃなぁ…」
一人呟きつつ、電車に揺られる。
ガタンゴトン……ガタンゴトン……。少し眠いな……。いやいや駄目だ。良いランク帯のダンジョンを見逃してしまうかもしれん。
でも……ちょっとだけ……目を閉じて休むだけだ……。俺はそのまま意識を失った。
ガタンゴトン……ガタンゴトン……。ガタンゴトン……ガタンゴトン……。
「次はー……」「次はー……」「次はー……」
ハッと目を覚ました時、俺は異常に気づいた。電光掲示板に奇妙なものが表示されている。
『譫懊※縺ョ譫懊※縺ョ鬧 AHFIYCXIODYOラララララララ』
な!? なんだ!? バグってるぞ!?
電光掲示板はあらゆる文字を無造作に流して終いにある文字列を表示させた。
『ココデオリロ』
電車の停止音が響き、扉が開く。それきり電車は一切動く気配が無くなった。
俺は意を決して謎の駅に足を踏み入れたのだった。
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