普通の彼

バブみ道日丿宮組

お題:僕が愛した唇 制限時間:15分

普通の彼

「ありがとう」

 その言葉は自然と出たが、行動の遅延は発生しなかった。

 用意した重機と刃物はしっかりと、肉を、骨を解体させた。

 1つだったものが多数へと変化する。

「小型になったね」

 頭、首、指、腿、胴体、陰部、乳房など。

 かつて彼女だったものがいくつものパーツに分かれた。

 頭である顔は、笑顔のままだ。

 死ぬ一瞬まで彼女は行為を楽しんでた。

 首には締めた跡がきっちりと残ってる。

 泡のようなものを口から吐き出した時、僕は意識が高揚しすぎて意識がなくなるかと思った。

 

 ーー造形美。

 

 まさにそんな感じのものを僕は瀕死の彼女から感じた。

 動かない口は今にも動き出しそうで、口端が上がってしまう。声がでそうになる。

「あぁ……」

 つるんとして、柔らかった彼女の唇はとても気持ちが良かった。何回も僕の陰部を咥えてくれた。最後には刃物とキスをさせたため、少し傷がついてしまったのが残念だ。

 生きてるのと違って、死んだものは回復しない。

 注意しなければいけない。

 愛撫して壊すわけにもいかない。

 けれど、自慰行為には必要不可欠だ。

 その手、その足、その頭。どれがかけても、興奮などしない。

「持ち運びは……」

 さすがに怪しまれるだろう。

 いったいどこに、身体を持ち歩くやつがいるのだろう。そんなやつがいたら、変態の称号を与えてあげてもいい。

 そう……僕みたいに腐らないように保管するのは紳士が行うことだ。

 盗まれるのも厄介だし、金庫を購入すべきだろうか? 使用目的なら、専用の冷蔵庫を設けるべきだろうか。

 内蔵部分は愛することができないので処分するしかないが、一度に大量の臓器をゴミとして出すのはリスクが高い。

 いっそのこと、誰かに料理として振る舞うべきだろうか?

 僕の料理センスは本が出るほどに高いと言われてる。

 それならば、無料で食べれると聞けば、多くのファンがやってくるかもしれない。

「……」

 その場合は、違う部屋を用意するべきだろう。

 なんにしても、唇だけは身に着けられるようにしよう。

 いつでも、どこでも、キス。

 そういうのに僕は憧れていたのだからーー。

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普通の彼 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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