秘密基地を作ろう(小学三年生)
「僕らだけの秘密基地を作るんや!」
目を輝かせる佐藤の言葉を聞いて、そういえば小学生の頃に秘密基地なんてものを作ったなぁと思い出した。
秘密基地。それは子供のロマンである。
大人にはもちろん、他の子にも知られてはならない。そんな約束事のもと、計画は実行されていくのだ。
俺と佐藤、あとは男子二人ほどが加わって秘密基地を作ることとなった。前世とメンバーは同じだったりする。
「女子には秘密だかんな。高木はとくに気をつけろよな」
「わかってるって」
男子の一人が注意してきた。俺が葵ちゃんと瞳子ちゃんと仲良くしているからだろう。前世ではそんなこと言われなかった気がするし。
秘密基地は佐藤の家の近くにある空き地で作ることになった。材木や布切れなんかをみんなで持ち寄った。
こういう遊びは親が見たらやめなさいと叱るんだろうな。子供ながらにそれがわかっているからこそ内緒にしているのかもしれなかった。
でも、ワクワクが止まらない。前世で大人になってからは思い出を振り返るだけだったけれど、今は現実として秘密基地を作れるのだ。子供としての心にも火がついているのか興奮を抑えられずにいた。
工具を持ち出して本気になって取り組んでいた。きっと前世よりもすごい秘密基地を作れるはずだ。情熱に精神年齢は関係ないのかもしれない。
「トシくん、今日も佐藤くん達と遊ぶの?」
「ごめんね葵ちゃん。男の付き合いだからさ」
「何よそれ。女のあたし達は仲間はずれって言いたいの?」
「落ち着いてよ瞳子ちゃん。終わったらちゃんと話すからさ」
「「ぶーぶー」」
秘密基地は一日二日で完成するものではなかった。その間、葵ちゃんと瞳子ちゃんをなだめるのが大変だった。
「もうちょっと板とかいるかな?」
「ここはカーテンみたいにしようぜ」
「完成したら僕がたこ焼き作ったるで。家にタコ焼き機があるんや」
どんな秘密基地にするのか。何を持ち込むか。完成したらパーティーでもしてお祝いでもするか。そんなことを話しながら俺達は夢中になっていた。
これは子供の頃にできなかったことではない。ただ、子供の頃に抱いていた熱を再燃させることではあった。
時間をかけて、ついに秘密基地は完成した。
空き地の隅っこにある、小屋と呼ぶにはいびつな形をしたもの。それが俺達が作った秘密基地だった。
「ついに完成したな」
「そやね。僕らの自信作や」
俺達は出来上がった秘密基地を前にして満足感に浸っていた。
もちろん子供が作ったものだ。雨風が続けば簡単に壊れてしまうだろう。
それでも、作って良かったと思えた。
仲間と笑い合う。築いたのは友情だったのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます