ハイスペックばかりの学園に紛れ込んでしまったごく普通のボク。
@yuki_yamanoue
第1話 入学式
ここは高層ビルばかり立ち並ぶ都心の一等地。
ボクは
今日から晴れて私立染井学園へ通う。
染井学園は都心にあるにもかかわらず、ホームルーム教室が入っている普通棟、理科室や音楽室のある特別棟、校長室や職員室のある事務棟、寮、広いグラウンド、体育館、講堂などの施設が充実している。
ボクはこれまでこういう都心とは縁のない生活を送ってきたのだが、とある事情で全寮制のこの学校に通うことになった。
校門をくぐり抜けると、まず初めに『新入生はこちらへ』という看板が見えた。
その看板が指している方を見ると、もうすでに登校した生徒であふれていた。
ボクは決して背が高いわけではないので、何が書いてあるのかわからなかったが、近くにいた生徒に話しかけると、どうやらクラス分けが書いてあるようだ。
この学校には二つのコースがある。
SPコースとSTコースだ。
SPとはSpecialの略で、学問、スポーツ、芸術の中で、特定の分野に秀でている生徒が合格するコースだ。
STはStandardの略で、一般的にいう普通科だ。
この学校を受験する際には書類を提出し、学力試験を受ける。それらの情報をもとに学校側が合格者を各コースに割り当てる。
このシステムがあるので、受験者はコースを指定できない。
よって、合格・不合格通知は家に届くのだが、合格者はどちらのコースに受かったのかはわからない。
掲示板に書かれている自分の名前をやっと見つけたボクは、コースをみて驚いた。
ボクは学問、スポーツ、芸術のどれにも秀でていない。
だから勝手にSTコースだと思い込んでいた。
しかし、違った。
掲示板にはしっかりとSPコース合格者の欄に『本庄 湊仁』と書かれていた。
何回見ても同じだった。
そこで、校内アナウンスが入り、
「新入生は至急講堂へお集まりください。講堂の入り口はクラス分け掲示板沿いの道を真っ直ぐ行き、突き当たりで右に曲がるとあります。繰り返します。......」
ボクは時計を見て焦った。掲示板を見るために長く待っていたらいつの間にか入学式の時間になっていた。どうりで周りの人がさっきほど多くないわけだ。急いで講堂へ向かった。
講堂へ行くと、どうやらクラスごとに並ぶみたいだった。掲示板ではコースしか見なかったから、どうしようとうろついていると、近くにいた先生から
「どうしたの?」
と声をかけられた。ボクは正直に
「先程クラス分けの掲示板でコースは確認したのですが、クラスを確認するのを忘れていました。」
と答えた。そうしたら先生がポケットから新入生の名簿らしきものを出して、ボクに「コースと名前は?」
と聞いてきた。もちろんきちんと返答した。
「SPコースの本庄 湊仁です。」
先生はSPコースの名簿に目を移して、
「1年A組ですね。あちらにあなたの名前が書かれた紙が置いてある椅子があるはずです。もう少ししたら入学式が始まりますよ。」
ボクは急いで先生にお礼を言って先生が指をさした方へ向かった。
そこにはポツンと一つの空席があった。まぁ、もうすぐで始まるっていう時間だからすぐにボクの席だとわかったけど。ここは講堂だから、よく学校でみる体育館でパイプ椅子みたいなのじゃなくて、ちゃんとした映画館のようなフカフカの椅子だ。
ボクが座ってまもなく、入学式が始まった。まず、校長先生のお話だ。
「みなさん、ご入学おめでとうございます。」
と始まる、どこにでもありそうな校長先生の入学式での挨拶だった。
なんのアレンジもない普通の挨拶に、ボクはうとうとし始めていた。
ここで寝てしまったら問題児になってしまう。
何とかそれだけは避けなければ......
眠気を押さえようと必死になっていると、いつのまにか時間が過ぎ、入学式が終わっていた。
「この後はクラス毎に教室へ向かってください。オリエンテーションがあります。」
入学式の進行をしていた教頭先生がそう言うと、一斉に新入生が立ち上がった。
ボクもみんなに続き、講堂を出た。
さて、ようやくこれから正式に染井学園の一員だ。
これからどんなことがあるのだろう。
ボクの胸の中にはワクワクと不安がある。
とりあえず、みんなの後を追って教室へ行った。
「みなさん、こんにちは。今日から1年A組の担任の
そう言って始まった高校生活初めてのホームルームだった。
「まず、黒板に書いてある席に座ってください。」
ボクは一番後ろの列の窓際だった。ボクが一番好きな席だ。
ボクがこの席を好きな理由はクラス全体が見渡せるからだ。
周りを見ると、このクラスは全部で15人のようだった。
隣はどんな人だろうと見たら、誰もいなかった。
(あれ?遅刻かな。)
クラス全員が席に着くまでしばらくかかった。
「みなさん席につきましたね。あれ?そこに空席がある。えーっと、
そう先生が言った瞬間、一人の女子が落ち着いてドアを開けて入ってきた。
「新木さん?」
先生が聞いた。
「はい。遅れてすみません。ちょっと道に迷っちゃって。」
「大丈夫ですよ。僕は担任の神村です。では、みなさん揃ったことだし、この学校について説明しましょう。入学式で軽く説明があったと思いますが、もうちょっと詳しく説明しようと思います。」
「この学校にはSPコースとSTコースがあるのはみなさん知っていると思います。ここにいる皆さんは、SPコースに合格した選ばれた者です。改めて、ご入学おめでとうございます。さて、SPコースにはA組B組C組とあって、Aには学問分野に秀でた人、Bにはスポーツ分野に秀でた人、そしてCには芸術分野に秀でた人が在籍しています。ここはA組なので皆さん学問分野で優れた成績を残していると思います。」
ボクは疑問に思い、手を挙げた。
「はい。えー、本庄くん。」
「先生の話を中断してすみません。ボクがA組に合格した理由がわからないのですが。」
教室のみんながこっちをジロジロ見ているのがわかった。
先生はボクたちのことが書いてあると思われる名簿のようなものをみて、
「本庄くんは調査書に書いてあった特別活動を認められてこの学校に入学しています。」
(特別活動って何だろう。これ以上先生に問い詰めるわけにもいかないからいいや。)
「ありがとうございます。」
「大丈夫です。では、話の続きをしましょう。今から配るのはこの学校の地図です。この学校はとても広いのでしっかりこの地図を頭に入れましょう。まぁ、学力がいい君たちなら大丈夫だろう。」
こういうふうに、このクラスでは全部が「学力」という言葉で片付けられた。
その後も、永遠とオリエンテーションは続いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます