ちゅーしたい
幼馴染の寝顔がどちゃくそに可愛いんだが?
GW3
<藤崎隼人Side>
「あ————なぁ、どいてくれないか?」
「やだ」
「お、俺っ……今日は洗濯物当番っ——」
「やーだ」
「じゃ、じゃあ……洗濯物干してくれるのか?」
「それは絶対にやだっ」
おいおい、なんで俺の仕事の順位がしたなんだよ。
とまあ、交際三日目の俺と彼女————あぁ今のなしっ。やっぱり彼女呼びは恥ずかしいから葵でいこう。
というわけで俺と葵は二人、ゴールデンウィークの三日目を満喫していた。満喫、本来こういうことを言うのだろう。結局のところ、休みの日は家でじっとしているのが一番楽なのだ。
まあ、今日の家事当番なんだけどな。
「——本当にどいてくれないのか?」
「あぁ……うんっ、やだ」
「なんでだよ」
「ここ……」
「なに?」
「ここが……いいっ」
「——っ。そ、そうかよ」
「うん」
俺とは反対側を向きながら膝枕状態で俺の膝を独占する葵。スマホをポチポチと触っていた。
いやぁ……それにしても、なんて可愛いんだ。この幼馴染は。
付き合い始めた次の日からまさかこんなにも変わるなんて……甘え上手と言うか、どこか素直になったというか、ただの幼馴染だった時の対応を忘れただけなのか。しかし、よう分からない。
とにかく、一つだけ俺に言えることがあるとすれば――――葵が可愛いってことだけだな、うん。
「……はぁ、もう分かったよ」
俺がため息交じりにそう言うと、葵はコクっと頷いて寝返りをついた。
「すぅ……はぁ……」
「え」
「すぅ……すぅ……はぁ……」
こ、こいつっ——俺の匂いを嗅いでやがる‼‼
なんか生暖かいと思ったらそう言うことだったのか。
って何を納得しているんだ俺は……まったく、あの日の夜から俺自身も少々浮かれている気がする。というか浮かれている。
ついつい高峰にも連絡入れちまったし、麻由里にも言っちまった。二人とも陽キャの余裕と言うか、おめでと。の一言で終わったが味気ない割にめちゃくちゃ嬉しく感じられた。
葵はそんな様子を一切見せないが、ちょっと様子がおかしい。
「————お、おいっ、何嗅いでっ——」
「いい匂いだね、隼人って……」
「え——」
「いや……なんかね、昔もぎゅってしたことあった気がするけど……ちょっと違うねっ……」
「そ、それは……もちろん、成長したからなっ」
「そ、そうだねっ。いつの間にか私よりも勉強できるようになってたし、体も
おっきくなってたし……それが分かった時にはちょっと悔しかったけど」
「……あぁ、そんなことあったな」
「お、覚えてるの?」
「いやぁ、まぁな。あの時の葵はワンワン泣いてたし……」
「泣いてないし」
「いやぁ……泣いてたぞ」
「泣いてないっ‼‼」
ほら、やっぱりこういうところがあるのは葵だしな。
可愛い以外にも、こんな意地っ張りなところも込みでもちろん好きだけど。
「……いじわるっ」
「べ、別に——いじわるをしたつもりは」
「してるしっ」
「してねぇって……まぁ、いらぬことを言ったのは謝る」
「……うぅ、隼人のばかぁ」
「お、おいっ―—痛いって」
ぼそっと呟き、俺の太もも辺りをぐーで殴るとむすっと頬を膨らませながら顔をあげる。
「ん」
「ん?」
首をこくっと俺の方に寄せて、その碧眼でこちらを見つめる。
改めて見ても可愛い顔に俺はごくっと唾を飲んだ。
「……ち、ちゅー」
「え、ちゅー?」
「ん……し、してっ」
「そ、それは——まだっていうか……なんていうか」
「だめ、なの?」
「だ、だめじゃない! でもっ、まだ早いって」
「……そ、そっか。じゃあいい」
すると、彼女はすぐに元に戻り膝の上でスマホをいじり始める。
「え」
「なに?」
「あ、いや……なんでもないっ」
「ん」
そうして今日もあっけなく終わったのだった。
え、それで終わり?
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