異世界進路希望調査で逆ハーレム系主人公って書いたのに手違いで魔王を倒す勇者にさせられた

第1章 転生したら最強だった

第1話 転生先を間違えられた

　ここはいわゆる死後の国。

　死んだ人たちが次の自分の人生を決めることができる。

　そしてその人生とは大きく分けて３種類ある。

　１つ目は天国で肉体を持たずのんびり暮らす人生。

　２つ目は記憶も何もかも忘れてリセットして初めからやり直す人生。

　３つ目は新しく別の世界で前世の記憶を持ったままやり直す人生。

　アニメやゲームが大好きな本作の主人公は当然３つ目の別の世界での人生を希望する。

「ではこちらの書類に記入をお願いします」

　受付のお姉さんから渡された書類にはどんな世界でどんな自分になっていきたいかを記入するものだ。

　まずはどんな世界からね。

　もちろん生きたい世界は決まっているわ。

　ある平和な王国でお見合いし放題な世界よ。

　次にどんな自分にかというところだが詳細に記入できる。

　性別はもちろん今と同じ女、年齢は今と同じ１６歳、身長は今は１５５センチあるけどもう少し小さく１４５センチと低身長を希望するわ。

　さらにすべての王子様にモテて、でもってもちろん王子様はイケメンで――――――（この先は長いのは以下略）。

　この書類にも書いてあるがあまりにも現実的はない状況とかを書くと補正はされるみたいだけど書くだけなら自由でしょ。

　私は転生先の世界を夢見て受付のお姉さんに書類を手渡した。

「「これでお願いします!!」」

　私と同時に私と同じくらいの歳だろうかとおもえる男の子が書類をお姉さんに手渡した。

　こんなに若い年齢で死ぬなんて不憫ね......それは私も同じね。

「はい。２人とも問題ありません。ではあちらの転送ゲートへ移動してください。

　お姉さんに案内されたとおり私と男の子は転送ゲートへ向かう。

「ではこちらにお入りください。」

　転送ゲートの担当のお兄さんが順番にちょうど人間１人入れそうなカプセルの見た目の転送ゲートに５人ずつ案内される。

　私は案内されたそのカプセルの中に入った。

　こうしていると遊園地のアトラクションの順番待ちをしているようね。

「では今から転送を開始します。眩しいですのでしばらく目を閉じていてください」

　私は瞼を閉じ新しい世界での自分を想像しながら転送されるのを待つ。

　あれ......少し話声が聞こえるわ。

「なあ？　この書類って４番の転送ゲートだっけ？　５番の転送ゲートだっけ？」

「たぶん５番の転送ゲートだろ。大丈夫だって......間違ってても俺たちに文句言いに来れないって。だって異世界に行くんだぜあいつら」

　ねえちょっとその辺の管理しっかりしてよ。

　もし間違ってたらその人は災難ね。

「では転送を開始します」

　お兄さんの声とともに瞼を閉じていても光が差し込むのが分かる。

　いよいよ私の人生の第２章だ!!　待ってね、王子様!!　私が今から会いに行くわ!!

・・・・・・・・・・・・

　まぶしさが消えたので、目を開くとさびれた村の前に現れる。

　なんだか体が重い気がするわ......

　自分の腰に大きな剣を装備している。

「何この剣、すっごく重いんですけど......」

　何となくその剣を鞘から引き抜いてみると自分の顔が剣に映った。

　凛々しい顔立ち、可愛い系っていうよりはかっこいい系ね......ってちがーう!!

「私......男じゃない......」

　剣に映った自分の姿はまぎれもなく男の子だった。

　しかも周りがやけに小さいと思ったら私の身長が大きすぎるだけだ。

「はっ......まさか......!?」

　数分前のことを思い出す。

（「なあ？　この書類って４番の転送ゲートだっけ？　５番の転送ゲートだっけ？」）

（「たぶん５番の転送ゲートだろ。大丈夫だって......間違ってても俺たちに文句言いに来れないって。だって異世界に行くんだぜあいつら」）

　あんたたちのせいね!!

「おーい。そこのお兄さん何やってんだべ？」

　豚の世話をしているおじさんに話しかけられた。

　今の私のこの不審な態度を見て声をかけてくれたんだろう。

「いえ、この後どうしようか考えていました」

　私は何となく自分が思う限りの男っぽさを意識して会話をすることにした。

　女言葉でもしゃべってたらそれこそ怪しまれそうよね。

「おめえさん。冒険者になるためにこの村に来たんだべ？　ならまずはギルドに行って冒険者登録するのがいいんでねえか？」

　なるほど、ギルド......そっち関係の異世界ものはあまり読んだことなかったわ。

　でも、友達から聞いた話だとギルドで依頼を受けてお金を稼ぐ確かそんな感じの場所だったわね。

「ありがとう、おじさん。ところでギルドはどっちにあるのですか？」

「あっちに見える大きな建物がそうだべ」

　おじさんは青い屋根の大きな建物を指差した。

　確かに冒険者と思われる人たちが出入りしている。

「ありがとう。すぐに行ってみます」

　私はおじさんにお礼を言って早速ギルドへ向かった。

「ここがギルド」

　中に入ると強靭な男たちやいかにも魔法使いっぽい女の人たちでいっぱいだった。

　私的にはあんまり怖いのとか嫌だから簡単な依頼を受けてなるべく安全に暮らしたいわね。

「新規登録の方はこちらへどうぞ」

　ギルドの受付のお姉さんが手を振りながら合図をしている。

　私は早速冒険者登録をしてもらおうとそのお姉さんのところへ向かった。

「えっと......冒険者登録をしたいのですが」

「はい、冒険者登録ですね。では冒険者診断をしますのでこちらのオーブに手を当ててください」

　そう言うと受付のお姉さんは丸い水晶玉のようなものを取り出した。

　私はその水晶玉にゆっくりと手を近づけた。

「えっ......これは!?　すごい能力です!!　剣士の才能としてもトップクラスでありながら、魔法適性も人並み外れてますよ!!」

「「なんだって!?そんなすごい冒険者が現れたというのか!?　俺たちの仕事取られちまうぜ」」

　周りの冒険者たちがざわざわし始めた。

「おいおい、みんな落ち着けよ。こいつは心強いじゃないか。魔王を倒す未来の英雄の誕生を祝おうぜ!!」

「「確かにそうだな!!　ついに魔王を倒す日がやってくるぞ!!」」

　なぜか場の空気は私が新しく現れた英雄で魔王を倒すことになっているらしい。

　え？　何？　待って......私は安全に生きたいんですけど......魔王？　何それおいしいの？　そんな名前を聞くだけでも恐ろしいやつと戦えるわけないでしょ!!

「嫌ぁああああ!!　絶対魔王とか戦いたくなぁあああい!!」

「えっ......ちょ......待ってくださいぁあああい!!」

　私はギルドのお姉さんが止めるのも無視してそのままギルドから逃げだした。