第290話 悪い奴って勝手に仲間になるよね

「す、すみませんでした! 姫の姉御!」

 リーゼントたちは自慢のリーゼントを地面にこすりつけるようにして僕に謝罪した。

 ......いつの間にか『姫の姉御』呼びも伝染しているわけだけど......

「それじゃあ姫の姉御、俺たちは引き続き黒ずくめの者を探しに行きますんで......失礼します」

 刺青男のリーダーはペコリと頭を下げ、そのまま立ち去っていった。

 黒ずくめの者......ああ! 忍者のことか!! ......ってまだ探してたのか!!

 僕が物思いにふけっているうちにリーゼント親分はビャッコに近づいていた。

「それにしても旦那もなかなか強いですね」

 リーゼント親分はニコニコしながらビャッコに話しかけていた。

 もしかしてこいつ......仲間になった気分でいるんじゃないだろうね?

「当然だろう......オレはこの国で一番強いからな」

 ビャッコは誇らしげに腕を組みながら答える。

 ......この街一番とか言ってなかったっけ? しれっとランクアップしているんだけど?

「なるほど! そりゃ強いわけですね! そんな旦那がどうしてこんなところに?」

 リーゼント親分はどこかに居そうな営業マンみたいにビャッコのことを褒めちぎっている。

「このあたりで盗賊が暴れているという情報があってな。そちらに居る貧にゅ......アイネ姫様の警護をしていたというわけだ」

 さっきビャッコが貧乳と言いかけた気がするけど僕は寛大だから気にしないことにするよ。

「な、なんだって!? そいつは危険だ! オレたちも一緒に警護させてください!」

「その盗賊ってあんたらのことだから!!」

 僕はすかさずリーゼント親分に突っ込みを入れる。

「いやいや、そんなわけないじゃないですか。オレたちこんなにいいやつらなのに!」

 もう襲ってはこなさそうだけど、僕の言うことは信じないのは変わらないようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る