第274話 僕たちにはどうすることもできないよ

 ソフィアを送り出した翌日。ジーク王子はいつもながら忙しいようなのでニーナだけで家にやって来た。つまりもう1人のメイド留学が決まっているエリナにもお迎えが来たのだ。

「えっと......はじめまして。エリナでぇす。これからよろしくお願いしまぁす......」

 同郷のメイドたちに馬鹿にされても平然としていたエリナだったが今日は一段と元気がない。

「メイドたるもの主人の前で暗い顔を見せてはなりません。これは1からしっかりと学んでいただく必要がありそうですね」

 ロリっ子メイドのニーナはその容姿からは考えられないほどの威圧感を感じさせる。

「エリナも何であんなに怖がっているんだろうか?」

 僕は特に誰に聞くわけでもなく呟いた。

「メイド業界でニーナ様は神様のような存在で知らない人はいないですから」

 笑顔で答えているのに全く笑っているように見えないたカタリナがまたま隣に居たので答えた。

「ふーん。そうなんだ......あれ? でも神様ならむしろ喜ばしいんじゃないの?」

「そうですね。最終的にはニーナ様に学んで良かったと思えますけど、その学習方法が魔王にしごかれているようなものですから並のメイドじゃ耐えられませんよ」

 ニーナが笑顔のままこちらに近づいてきた。

「あなたも一緒に学習していきますか? 1人学ばせるのも2人学ばせるのも私からすれば変わりませんから」

「え!? いえ......私は姫様のお世話がありますから......ね! メイド長」

 カタリナは冷汗を流しながら幼女に怯えながら答えると、メイド長に助けを求めて振り向いた。

「どうしてもカタリナが学びたいというのであれば、本国から臨時のメイドを派遣しますので問題ありませんよ」

 どうやらメイド長は助けてくれないようだ。このまま見守るとカタリナのあたふたする面白い姿が見れるからそれはそれで楽しみではあるが僕は美人のお姉さんには優しいからたすけてあげるのだ。

「ニーナ、悪いんだけどカタリナは当家の仕事があるからそれはまたの機会にしてその分エリナをみっちり鍛えてくれないかな?」

「アイネ様がそう言うのであればまたの機会としましょう」

 どうやらニーナも納得してくれたようだ。が、1人被害をこうむった人が反論する。

「姫様、その分って何でぇすか!? 私だけ扱いひどくないでぇすか!?」

「主人に口応え......これは問題ですね。罰として馬車を使わずに我が国まで走って来てもらいましょうか」

 体育の先生が「罰として校庭○周!」みたいなノリでニーナはエリナに罰を与える。

 確か馬車でも何時間もかかる距離あったような......フルマラソンをすると思えばそんなに大変じゃない......よね?

 エリナの悲鳴が聞こえたけれど僕は心の中で応援することしかできないのだった。

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