第270話 アスカ……頑張ってきてね

「と、とりあえず性格を治すかどうかはともかくとしてナナリーは預からせてもらうよ......メイド留学制度の抽選で決めたんだよね?」

 僕は途中メイド長の方を振り向きながら尋ねる。

「はい。さようでございます」

「なら断るわけにいかないね」

 再びアラン王子の方を振り向いて僕は承諾した。

「ありがとう。それにしてもやはり服を着ながら会話をするのは恥ずかしいな。服を脱いでもいいだろうか?」

 アラン王子は自分の服のボタンに手をかけようとする。

 いや......今のアラン王子の発言に対して「どうぞ服をお脱ぎください」などと言う人はいないだろう。というか靴を脱いでもいいだろうか? みたいな感じで聞かないでくれ!

「豚のくせに人の許しを得る前に服を脱がないで貰えるかしら?」

「ぶひぃいいい!」

 ナナリーはどこから取り出したのか鞭でアラン王子の腰のあたりをぶっ叩くといい声でアラン王子が鳴いた。

 ......アラン王子の奇行を止めてくれたのは良かったけれどその止め方はいかがなものだろうか?

「はっ......す、すみません! このような場で失礼しました」

「いや、素晴らしい一撃だったよ。また頼む」

 アラン王子はナナリーの鞭を褒めた。

 僕はナナリーのこの性格を治すためにはやはりアラン王子から遠ざけるしかなさそうだと思わずにはいられなかった。

「ナナリーを受け入れるのは決まったとして、代わりにアスカをアラン王子のところに送り出せばいいの?」

「姫様! 何で私を送り出すことが決定しているんですか!? 言っておきますけど絶対に嫌ですからね! あそこに戻るのは!」

 僕の発言に当然のようにアスカが反論をする。そしてアスカの質問に僕が答える前にメイド長が代わりに答える。

「姫様、申し訳ありませんがメイド留学制度に出すメイドは以前お伝えしたとおりエリナとソフィアになります。アスカを他国に出せば国辱をさらすことになりますから勝手ながら登録しませんでした」

「そうですよ! メイド長が言うとおり私がメイド留学なんかしたら『こくじょく』をさらしますよ!」

 アスカは国辱の意味を分っていないのだろうか? どうやら馬鹿にされていることにすら気づいていないようだ。

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