第236話 結婚した方がいいんじゃない?

「あれ? それならコロネと結婚した方がいいんじゃない? 王位を失うのはデメリットが大きいと思うんだけど?」

 僕はふと疑問に思い呟いた。

「そ、それは......何となくですよ! なんとなく!」

 トリュフはあからさまに僕から目線をはずした。

「姫様、それは私から説明しましょう。小国の王よりも大国の貴族の方が生活も豊かになります。特に姫様の国の貴族になればおそらく収入が10倍......いえこの様子なら20倍は見込めるでしょう」

 トリュフが答えなかったので代わりにメイド長が説明をした。

 なるほど......中小企業の社長よりは大企業の役職のほうが年収が高くなる理論みたいなものかな? でもさすがに収入20倍は言い過ぎじゃないかな......

「あの......ところで年収はいかほどに......」

 トリュフがメイド長に耳打ちをしていた。どうやら収入のことは一応確認しておきたいようだ。

「......くらいですね」

「え、えぇ!? そんなに!? じゃあほんとにジャスト20倍じゃないですか!?」

 メイド長が伝えた金額にトリュフは目を丸くして驚いていた。

 僕はジャスト20倍ってところに驚きだけどね! この国の収入を知らないはずなのにメイド長がピタリと当ててるからね! いや......やっぱりメイド長ならできそうだな。

 トリュフはくるりとこちらを向いて僕に迫る。

「アイネ姫様! なんと今なら私の国を2割引きご購入できますよ! さあ、お買い得な今だけ! 今を逃すともうチャンスはないかもしれませんよ!」

 タイムセール感覚で国を売り出す王って......というか原価いくらからの2割引きだよ!! 今はそんなことより......僕はこう返さざるを得ないよね!

「もう一声~!」

「な!? ア、アイネ姫様......あなたもなかなか商売上手ですね......仕方ありません、では! 3割引きでどうですか!?」

 トリュフは1歩後ずさりをした後に、すぐに僕にまた顔を近づけてきた。

 だから原価いくらだよ!! まあどっちにしても今は買えないわけだしそのことを伝えよう。

「値切ってもらったところ申し訳ありませんが国の売買はお父様とお母様の許可が必要ですのでお返事は後日お伝えします」

「では今から一緒に行きましょう!!」

「いや......ついて来ないで貰えませんか?」

 メイド長たちの協力もあってなんとかトリュフがついて来ることを阻止して僕たちは帰ることになった。

 それにしても今回のコロネ......いろいろと可哀そうな扱いだったな。次に会ったときは優しくしてあげよう。

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