第225話 どうしてだったんだろう?

「ふぅ......なんだかよく分らないけど助かったぞ! 意外と痴呆にするの忘れてただけだったりして!」

 僕は頭を抑えて首を横に振った。

 さすがにそれはポジティブシンキングすぎる。何か僕を痴呆にしてはならない理由でもあるんだろうか? それともワールドオーナーの存在を知った人間を痴呆にしたんじゃなくて、もっと別の何かを知ってしまったから痴呆にしたんじゃないだろうか?

「いや......考えすぎか。どの道考えても分らないし、とりあえずエリシアさんを探しに行こう。確かあっちの方に居るんだったな」

 僕はブルマ少女の指示した方に進んでみた。

 しばらく歩くとエリシアさんがキョロキョロしていた。案の定、迷子になっていたということだ。

 まあでも誘拐とかじゃなくてよかったよ......

「あら? アイネちゃん......どこに行ってたのよ? こんな庭で遊んでたら迷子になるでしょ?」

 エリシアさんは頬を膨らませて怒っていた。

 ......迷子になっていたのはエリシアさんの方だけどね。

「まあいいわ! 帰りましょう!」

 そう言って僕の手を引くエリシアさんは城の外へ向かって歩き出した。

「どこに帰るつもりなんですか!? お城はあっち! 着いて来てください!」

 僕は真後ろを指差してエリシアさんに突っ込みを入れた。この人の迷子は筋金入りだと思いながら僕は逆にエリシアさんの手を引いて案内するのだった。


「お母様! 誘拐されたかもしれないと心配しましたわ」

 セレナちゃんは涙を眼に浮かべてエリシアさんの胸に飛び込んだ。

「心配させてごめんね。でも迷子なんていつものことじゃない?」

 エリシアさんはセレナちゃんの頭を撫でた。

「そうでしたわね」

 セレナちゃんはさっきまでの様子と打って変わってケロリといつもの笑顔を見せた。

 ......迷子がいつものことで納得するのはどうなんだろうか? 泣きやまないのよりはいいけど......

「さあ! お見合いの続きを始めるわよ!」

「失礼します。サブロー様の治療の件でお伺いしました」

 エリシアさんの言葉とほぼ同時に白衣を着た人たちが部屋に入ってきた。

 痴呆になったサブローさんの治療のために、ロイド王子が医師たちを呼び集めてきたのだろう。

「母さん......今から......父さんを......皆で......探す」

「そんなの後でいいでしょ!! 今はお見合いのほうが重要よ!!」

 だだをこねるエリシアさんをなだめ、今日のお見合いはこれで終わりということになった。

 ちなみにサブローさんはいつも庭にいるもののあまりにも庭が広いのでどこに居るか探すのは一苦労なのだそうだ......僕はたまたま2回も会えたのはすごく運が良かったようだ。

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