第221話 自慢話ほど聞くに堪えない話はない

「分ったよ......話を聞けばいいんでしょ? はぁ......」

 僕は観念したようにため息をついた。

「そうか! 聞きたいのか! しょうがないなぁ! そこまで言うなら話を聞かせてやるしかないな!」

 サブローさんはさっきまでの記憶を無くしたのだろうか? 別に僕は聞きたくないんだけど?

「オレは異世界転移特典として副人格を貰ったのさ」

 僕の心の声は聞こえるはずもなくサブローさんは話を続けた。

「副人格?」

 なんだそれ? 何か役に立つんだろうか?

「簡単に言うと2重人格になるんだ。もちろん主人格はオレな! だが、ただの2重人格とはちょっと違っててな、人格切り替えもオレのタイミングでできるし、副人格の記憶はオレに共有される」

 サブローさんは親指で自分のことを指し示した。

「いや......結局それがなんの役に立つの?」

「ふっ......おいおい、慌てるなよ。慌てなくったって今から話してやるよ」

 サブローさんは肩をポンポンと叩いた。

 ......別に慌ててないんだけど。会話が成立しなくなるから質問してあげてるだけだよ?

「これはたまたま入手した情報だがワールドオーナーは『この世界のあらゆるものの存在を書き換える能力』を持っている。だがしかし! オレは見事、副人格でいる時に能力でオレのことを痴呆にしやがったんだぜ! つまり出し抜いてやったわけよ!!」

 サブローさんは腕を腰に当てて胸を張って立ち上がった。

 格好良く決めてもらったところ悪いんだけど、僕は『出し抜いた』ってことより別のことが気になった。

「いやそんなどうでもいいことより、むしろワールドオーナーの情報源の方が知りたいんだけど?」

「どうでもいいこととは何だよ!? あーあ、おじさん急に話したくなくなっちゃったなぁ。おじさん帰っちゃおうかなぁ」

 サブローは背を向けて立ち去ろうとした。

 もしかしてただ自慢したいだけじゃないんだろうか? というかここがサブローさんの帰る場所だよ!! どこに行くつもりだよ!

「わぁ、すごいですね、おじさま。ワールドオーナーを出し抜くなんて。でも僕、ワールドオーナーの情報源の方についても話を聞きたいな」

 僕は回り込んで可愛さを前面にアピールした必殺上目づかいでお願いをした。

「しょうがないなぁ! 話してやろうか」

 嬉しそうな顔をして鼻の下を擦るサブローさん。これは意外と扱いやすいかもしれない。

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