第218話 お見合い中断!?

 お寿司(偽)はお寿司の味こそはしないもののさすがは王子付きの料理人が作ったもので美味しくいただいた。

「ご馳走様。美味しかったよ」

「それは......よかった」

 僕が料理の感想を言うとロイド王子は安堵の表情を浮かべた。

 料理も食べたしそろそろ帰ろ......

「姫様、本日は1日お見合いとなっております」

 メイド長が前触れもなく僕の心の声に反応した。

「分ってるよ! エリシアさんとの約束なんでしょ! ってあれ? エリシアさん......なかなか来ないね」

 ここに来てもう2、3時間ほどは経過しただろうか。後で合流するような話をしていたのに門番に捕まった後から姿を見ていないのだ。

「ロイド様! 失礼します。大変申し上げにくいことなのですが......」

 部屋に入ってきた兵士はロイド王子の耳元で何かを囁いていた。

「つまり......母さんが......」

 ロイドは険しい表情を浮かべて考えごとをしているようだ。いつになく真剣な表情なのでエリシアさんに何かあったに違いない。もしかして誘拐でもされたのだろうか?

「また迷子になったと......」

 ......誘拐ではないようだ。

「トイレに行くと言ったきりなかなか戻られないので女性の兵士に確認に向かわせたところどうやら窓から逃げたらしく......」

 あの人王女のくせにやることがヤンチャ過ぎないだろうか......

「分った......では......すぐに捜索を」

「はっ! 城中の兵に付近の捜索をさせます!」

 ロイドの命を受け、兵士は部屋を出て行った。ロイドは兵士が出て行ったのを確認して僕の方を向いた。

「申し訳ない......母を探すので......お見合いは......中断」

 おぉ? まさかのお見合い中断! 何と響きのいい言葉だろうか......いや今はそんなことよりも!

「大丈夫だよ。僕たちも探すよ。メイド長やサーシャも手伝ってあげて」

「「はい。承知しました」」

 メイド長とサーシャはコクリと頷いた。

「友達の婚約者候補の母親が行方不明とあったら私も手伝わないといけないわね!」

 コロネはいつになくやる気を見せている......が、そこまで来るとただの他人なのでは?

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