第201話 最後の受験者
「さっきの受験者は途中で帰ったので棄権だお」
「はい。おっしゃる通りです。受験番号2212番も不合格で」
相変わらずシズクの言葉にイエスマンのように答えるサーシャ。
なんだかよく分らない展開になってきたけどこれでメルダリンの合格率が上がったわけだ。次が最後の受験者ということか。
「サーシャ、次の受験者は?」
「はい、姫様。こちらをご覧ください」
僕はサーシャから渡された紙に目を通す。そこに書かれている名前を見て驚いてしまった。
――――――ワイルドオーナ
「ワ......」
つい癖でワールドオーナーじゃないのかよ! と突っ込みそうになってしまった。危ない......そんな突っ込みしたらサーシャにバレてしまう。というかそもそも名前で分かるような親切設定なんてあるわけないだろ!
「「ワ?」」
サーシャとシズクが僕の漏らした声に反応して首をかしげていた。
「ワ、ワイルドな名前だなぁ......」
僕は咄嗟に思いついたことを口にした。
「ええ、名前は確かにワイルドなんですけど......でも見た目は全然ワイルドじゃないんですよ。完全に名前負けしている感じですね」
サーシャが付け加えるように教えてくれた。
思い返してみれば3次試験のときグレタ以外にワイルドな見た目の人居なかったな。一体どんな人なんだろ?
そんなことを考えていると弱々しい音でドアが叩かれた。
「失礼しますじゃ」
ドアが開かれると杖こそは使っていないものの小刻みに震えながらゆっくりとメイド服の老婆が部屋に入ってきた。
「えっと......この人は受験者の付き添いの人?」
僕は老婆を指差しながらサーシャの方を向いた。
「何をおっしゃいますか、アイネ姫様。わしが受験番号5293番のワイルドオーナですじゃ」
サーシャの代わりに老婆が笑いながら答えた。
「あ! 分かった。実は意外と若いとか?」
「いいえ、今年で79歳になりますのじゃ。わしの人生の最後にアイネ姫様のところで働くという夢を叶えたくて受験したのですじゃ」
え、何これ? 別の意味ですっごく落としづらいんだけど! 落ちたら来年受験しに来てねとか言える雰囲気じゃないからね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます