第122話 コーヒーはあまり好きじゃないけどね
「お待たせしました。私のブレンドしたコーヒーです。お口に合うといいのですが......」
クリスさんはポットからコーヒーを注いで私の前にカップを置いた。
ちなみに僕は苦いからコーヒーはあまり好きじゃないけど淹れたてのほろ苦そうだが心地よい香りが漂ってくるので今日は飲んでみたい気分になる。
僕はカップを手に取り口に近づけるが途中で止めた。なぜ止めたかというと......
「あのクリスさん......あんまりじろじろ見られていると飲み辛いんだけど」
そう。ものすごく期待の眼差しで見ていたのだ。ガン見されるとはまさにこのことだろう。
「す、すみません。私、コーヒーには自信があるんですけど姫様のお口に合うか不安で......」
クリスは僕のほうにまっすぐに手を伸ばし、手ひらを否定するように何度も振っていた。
「美味しいわよ。クリスちゃん......可愛い女の子なのにコーヒーを淹れるのが上手なんてもう無敵ね!」
エリシアはクリスの頭をなでなでしながらコーヒーの感想を述べていた。
あれ? 美味しいと言ってもらえたのになぜかクリスさんの表情が暗いぞ。どうしたんだろうか?
「あの......すみません。誤解されているかと思うのでお教えしますが私は男ですよ?」
「アイネちゃん、悪いんだけどほっぺを引っ張ってもらえるかな?」
エリシアはクリスの言葉が理解できなかったせいなのか僕に珍妙なお願いをした。
......というかほっぺを引っ張るのは夢かどうかを確かめるときにやるやつじゃなかったっけ?
と、思いつつも一応引っ張ってみた。
「痛いわ......聞き間違えじゃなかったみたい......」
なんでこれで聞き間違えじゃなかったと断言できるのかはよく分らないけど......ま、エリシアさんが納得しているならそれでいいか!
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