第68話 慰めないとね

「チャーリー殿下。そろそろ移動しないと次の予定がありますので」

 チャーリーのお付きのメイドと思われる女性が声をかけていた。

「そっかぁ。残念だけどぼかぁ帰るよ。アイネ姫姉ちゃん、またね!」

「うん。また」

 僕の返事を聞いてチャーリー殿下はニコッと笑って帰っていった。

 さて、あの分かりやすく部屋の隅で体育座りをして落ち込んでいるあの人(ガニアン)を何とかしないと。

「えっと、そのガニアンさん。僕が言うのもなんだけど元気出してね」

 僕のせいで告白する前に振られたみたいな感じになってしまったので気遣いながら声をかける。

 しかし、声が聞こえなかったのかガニアンは微動だにしない。

「姫様! ここは私に任せてください」

 アスカが自信満々に張った胸に拳をあてていた。

「......いや、不安しかない」

「どうしてですか!? 私は姫様より年上! つまり姫様よりは人生経験かなり積んでいるんですよ! 女の恋の悩みなんてすぐに解決してみせます」

 ......女としている期間でいうと圧倒的にアスカのほうが長い。だって僕の人生のほとんどは男で生きているわけだし。

「そうだね......じゃあアスカに任せるよ!」

「はい! 任せてください! 姫様!」

 アスカはガニアンのところまで歩いていくと声をかける。

「ガニアン王女! 残念でしたね。でも男なんて沢山いるんですから片っぱしから声かければ誰かと付き合えますよ!」

 ......アスカは何を言っているんだろうか? そんなことしたらガニアンさんがとんでもないビッチになっちゃうじゃないか......というか一国の王女に何をさせようとしているんだこの駄メイドは!

「貴様! 今の言葉は私に対する侮辱と受け取ったぞ! うち首にしてくれる!」

 ガニアンは恐ろしい形相でアスカを睨みつけながら言い放った。

 またまたまずいことになったぞ。

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