第60話 ピュア
力を入れ続けたためか2人の木剣がバキッと音をたてて折れてしまった。
どうやら2人の本気の力に木剣は耐えきれなかったようだ。
「まぁ......丁度いい幕切れだよね。木剣でも人を殺せそうな感じだったし、2人ともお疲れ......」
と僕が2人に近づきながら歩きだしたが、2人の熱量が全然下がっていないのに気がついた。
「「じゃあここからは剣技はやめて、拳技で決着をつけようか!」」
「いや上手くないから! いいからもうやめなさい!」
「......アイネ姫がそう言うなら......」
「......アイがそう言うなら......」
僕の一言でガニアンとカインはしぶしぶながらにも決闘をやめることにしたようだ。
「カイン殿下、この後の予定がありますので、そろそろ帰りましょう」
カイン殿下のお付きのメイドと思われる人が一礼をして僕たちに声をかけてきた。
「もうそんな時間か......仕方がない。アイ、今度こそは2人きりで話をしよう」
カイン殿下はメイドのほうに歩いていく。なんだか嵐が去って平和に......
「姫様、杖の件をお聞きしなくてもよろしいのですか?」
「あ、そうだった」
メイド長が当然のように僕の後ろに立っていた。まあ......そのおかげで思い出せたのだけど。
「カイン殿下、イセカイテンイの杖は持ってないかな?」
カイン殿下は足を止めて僕のほうを振り向いた。
「ああ、持っているぞ。もしかして欲しいのか?」
「はい!」
「なら今度持ってきてやるよ」
「ありがとう」
おお、話が早くて助かる。怖い顔しているくせに意外といいやつだな。
「代わりと言っちゃなんだけどお願い聞いてくれないか?」
おい......まさか杖をやる代わりに結婚しろとか言わないよね......
「な、なにかな......?」
「5秒でいいから......あ、あ、あ、握手して欲しいんだけど......」
顔を真っ赤にしてすごく照れているカイン。
......小学生でも手を繋ぐくらいしそうなのに握手程度でそんな茹でダコみたいになるのか。
「まあ、いいけど」
ということで5秒ほど握手してあげた。
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