第180話 君のギフトは危険すぎる
「――という感じで、空を飛ぶ畑のことは王宮、いや、王都中で話題になっている。ただ幸い、誰もあれがギフトの力だとは思ってもいないようだ」
冒険者ギルド王都東支部。
リヨンたちのパーティが借りている部屋で、僕たちはその後の顛末を教えてもらっていた。
「幾ら神から与えられたギフトとは言え、普通そんな人知を超えたものが存在するとは思いませんからネ」
苦笑気味に言うララさん。
「かの〝黄昏の魔女〟の仕業ではないか、なんて言われているよ」
「黄昏の魔女……?」
「かつて人魔大戦において、人類軍の劣勢をたった一人で覆したとされる最強の魔法使いだよ。どうやらまだご存命らしく、最近この国でその姿を見かけたという噂があるんだ」
「へえ」
どうやら世の中には凄い魔法使いがいるらしい。
「ジオのギフトはすごい」
「すごいっていうか、ヤバいわよね……。あんな真似ができるなら、もはや戦争なんて負けっこないでしょ」
シーファさんが賞賛する一方で、あのとき高いところが怖くてずっと目を瞑っていたはずのアニィは呆れ顔だ。
「彼女の言う通りだよ。……ジオ、君のギフトは危険すぎる」
「そうですネ……万一、その力が悪用されるようなことがあったら、この国、いえ、世界がひっくり返るでしょウ」
あ、あれ?
急に空気がピリッとなった。
リヨンやララさんだけでなく、ロインさんも急に厳しい表情だ。
ボボさんだけは首を傾げているけど。
それを感じ取ったのか、シーファさんやアニィが身構え、それにソファでうつらうつらしてたはずのセナの目がぱっちり開いていた。
一触即発の雰囲気。
だけどそれも一瞬、リヨンがふっと笑って、
「いや、心配しなくてもジオをどうこうしようなんて思っていないよ。君はどう考えても、その力を悪いことに使うような人間じゃないしね」
「それにジオ氏には信頼できる強い味方がいまス。悪い人間もそう簡単には手を出せないでしょウ」
「もちろん、何かあったら俺たちも力を貸すぜ」
「ジオたちとはもう友達だからね!」
彼らの言葉を受けて、シーファさんたちが頷く。
「当然。みんなでジオを悪い虫から護る」
「……と言いつつ、うちは天然系が多いから、わたしがしっかりしなくちゃいけないわね」
「も、もちろん、私も協力します……っ!(近くでしっかり悪い虫=女を排除していかなければ……っ! ハァハァ)」
「すやー」
約一名、寝てしまったやつがいるけど気にしないようにしよう。
「みんな……」
「それに、君には本当に感謝しているよ。そういえば色々と驚くことがあり過ぎて、ちゃんとお礼を言っていなかったかもしれないね。君のお陰で王都は護られた。本当にありがとう」
「いやいや、僕はちょっと力を貸しただけだよ」
「「「ちょっと?」」」
なぜか全員から一斉に突っ込まれてしまった。
「ハァハァハァ!(やはりリヨン×ジオが一歩リードですかああああああっ!? これはイオ×ジオも負けてはいられませんねっ! 大穴ですがビリー×ジオにも頑張って欲しいところですっ!)」
それにしてもサラッサさんの様子がまたおかしい……。
第二家庭菜園の中心は、ミルクやピッピ、そしてクルルたちペットのための区域となっている。
そこにはスキルで建てた家屋があって、そこで寝泊まりしてもらっていた。
もちろん家屋のトイレを使うことはできないので――主に大きさ的に。三匹とも知能が高いから教えたら使えるかもしれない――トイレは外だ。
菜園の土を掘ってそこに用を足せば、あっという間に土に吸収されるので、家の周囲が不衛生になったり、臭くなったりすることもない。
「うーん。さすがに狭くなってきちゃったかな……」
今やピッピがミルクより大きくなり、体長は二メートルを超えている。
かと言って、決してミルクの成長が止まったわけではなく、まだまだ大きくなっていた。
しかも最後に生まれたクルルが、そのミルクに匹敵するほど大きくなっているのだ。
人間が住む一般的な家屋では、特に廊下とか出入り口が非常に窮屈そうだった。
「新しく屋敷生成スキルを覚えたし、これに建て替えてみようかな」
「にゃ?」
「ぴぴ?」
「くるる~?」
何をするのだろうと首を傾げている三匹の前で、新たに屋敷を作り出す。
「うわっ……めちゃくちゃ大きなのが現れた!?」
「にゃ!?」
「ぴぴぴ!?」
「くるるっ!?」
推定三階建て。
建物だけでも今までの家屋が四つ分、いや、五つ分くらい横に広いというのに、それに大きな庭が付いている。
「何あれ? もしかしてプール?」
しかもその庭はプール付きだ。
大きな扉から中に入ってみると、広々とした玄関が出迎えてくれた。
一体どれだけ部屋があるのか、廊下には幾つもドアが並んでいる。
「僕の家より遥かに立派だ……家具もちゃんとあるし……ペット用なのに、これでいいのかな?」
「にゃにゃにゃにゃ!」
「ぴぴぴぴぴっ!」
「くるる~~~っ!」
まぁ、三匹とも喜んでるから良しとしようか。
と、そのときだった。
突如として窓の外が激しく光ったかと思うと、結界が破壊される轟音が響き渡ったのは。
ドオオオオオオオオオンッ!!
『見つけたぞ、闇黒竜バハムート』
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