第3話 月明かりの下で

ここは涼しくて落ち着くな


ルリどこにいくの駄目よ

そっちの方には人がいるから


ああ、チワワがきた

よしよし


ごめんなさい


迷い込んできたのかな


ルリ駄目よ


大丈夫だよ

可愛いね

よしよし

君が飼い主かな


はい


僕が貰っていい


ごめんなさい、それはできません


そうだよね

冗談だよ

よかったら隣に座らない

涼しいよ風があたって

前に行くと見晴らしがよくて

下の街並みがみえるんだ


そうなんですね

でも、恥ずかしいです


大丈夫、何もしないよ

それとも僕が変わった人に見えるのかな


いえ

そのようなことはないです


それとも僕の隣に座りたくないの


いえ、違います


じゃあ、いっしょに座ろう


はい


涼しいよね


はい

あれ、ルリ

ルリがいない


大丈夫だよ

飼い主のところに帰ってくるから

僕と君を二人にさせてくれたのかもね


いえ


君は大人しいんだね


そうですか


うん

もしかして、一人っ子かな


はい


僕も一人っ子なんだ同じだね

僕は母子家庭で育ったのだけど父親が飲んだくれでさ

僕が中学校2年の時に死んだよ

母さんが一人で育ててくれたんだ

母さんには感謝しているよ

だいぶ苦労したと思う


私の父は厳格で、しつけが厳しかったです

ただ、父は私に甘くて優しい面もありましたが

いちばん悲しかったのは

母からはあまり愛情を感じずに育ちました


さびしかったね


そうです

愛情が欲しくて

今は一人でもいいので

誰かから愛されたいです

さびしいです

寂しくてたまりません


私は

瀬波加奈と申します


ああ、僕は村田優一

よろしくね


はい、こちらこそ、よろしくお願いします


ぼくは社会人だけど

加奈さんは


学生です

どこの大学


東京大学です


すごいね


いえ、大したことはないです


でも、すごいな

高校しか卒業していない僕の隣にすわってもいいのかな


とんでもないです

私は学歴ではないと思っています


そうだね

でも僕は高校しか卒業していないから

そういうセリフはいえないんだよね

明るい話題に変えよう

そういえばルリちゃん可愛いね


はい


何歳


1歳です


そうなんだね

来たよ

本当に可愛いね

あ、またあっちに行ったよ

ちょっと待ってて

捕まえてくるから


はい


走っていくから早いな

見失っしまった

ここに野草があるよ

色はわからないけど

月明かりでほんのり照らしていて

この色はピンクかな


ほら、加奈さん

これプレゼント


いいのですか


もちろん

月明かりの下で見ると

やはりピンクだったね


はい、ありがとうございます

うれしいです


お礼が欲しいけど

いいかな


はい


寄り添っていい


いえ、恥ずかしいです


大丈夫

加奈さんが僕の左側に座っているよね


はい


右肩を僕の左肩に


いえ、恥ずかしいです


大丈夫


本当に恥ずかしいです


最後に加奈さんの左肩に僕の左腕を置く

ほら

恋人になった

嫌かな

今は一人でもいいので誰かから愛されたい

そう言ったよね


はい


しばらくこうしてていい


はい・・・


ほら、星がきれい

月が君を照らしている

僕は明日帰るよ


私も明日帰ります


同じだね

じゃあ、そろそろ帰るね


はい、ありがとうございました


今日は僕の恋人かな

そうだよね


はい・・・


じゃあね

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