第55話 俺の願い

「・・・白い・・・」


薄っすら目を開けると


なんだかいつも寝起きしている俺の部屋とは違うような気がした。


(あれ?まだ朝だっけ・・・仕事に行ってたような気が・・・)


「気が付きましたか?ご気分、いかがですか?」


(・・・え?・・・)


声のする方を見ると、名札を付けた女のヒトがこっちを見ていた。


よく見ると、俺の腕には点滴が刺されていた。


「ここ・・・どこ、ですか・・・?」


ハナシを聞くと、どうやら俺は現場で倒れたらしく


救急車でココ(病院)に運ばれて来たらしい。


「後でまた先生が来られますが、特に問題がなければ点滴が終われば帰れると思いますよ。少しお疲れがたまっていましたか?」


「はい、・・・まぁ、少し・・・」


なんとも歯切れの悪い返事しか出来なかった。


(なんでぶっ倒れたかな・・・)


そういえばあれからほとんど眠れていなかった。


(おかげでぐっすり眠れた、かな・・・)


先生が来て状態を診てもらうと


まぁ、寝不足と疲労の蓄積ですかね、と


大したことはないカンジだったので


点滴を終えて、事務所に連絡をした。


大事をとって、今日はもう帰ってもいいと言われた。


「・・・じゃぁ、帰るか。」


どれくらい寝ていたのかな。


少しカラダもラクになっている気がした。


安心したのか、お腹が空いている気がした。


(・・・コンビニ・・・)


すぐ近くにあるコンビニに入ってみると


「あ・・・」


真っ先に目に入ってきたのは


が大好きだった


「・・・プリン・・・」



       ☆



あの日から数日経つけれど


屋上へ続くこのドアは


まだ開けっ放しのままだった。


「ホント、誰も来ないんだな・・・」


屋上に入ると、念のためドアを閉めた。


いつも座っていた辺りに腰を下ろして


コンビニで買った


が大好きだったプリンを


そっと置いた。


じっと見つめてると


泣くかな、って思ったけれど


「さすがに、もう一滴も出ない、かな・・・」


ため息交じりに、うっすら笑った。


大の字に寝転んで空を見上げた。


「静かだなぁ・・・」


はたしかに


目の前で


この手の中で


光の粒になって消えてしまった。


けれども


本当にいなくなってしまったのか


元のあるべきトコロに戻ってしまっただけなのか


「・・・俺の最後の願い、届かなかったのかな・・・」



== そらへのおてがみは ==



の言っていた


空へのお手紙、って


「・・・願い、なのかな・・・」



== いつでもじゆうにかける ==



「いつでも自由に・・・願いはいつでも届けられる、ってコトかな・・・」



== そらからのおへんじは ==



空からのお返事、は


「願いへの返事・・・叶う、ってコトとは違うのかな・・・」



== いつもかえってきている ==



「いつも返って来ている・・・叶えたいコトが何かのカタチで示されている、ってコトなのかな・・・」



== でも ==


== きづかないと ==


== みつけられない ==



「でも、気づかないと・・・見つけられない・・・」



== かなっていることにきづけない ==



「叶っているのに・・・わからない・・・」



== ほしかったものとちがっていても ==



「あの時のように、と一緒にいられなくても」



== すがたやかたちが ==


== おもっていたのとちがっていても ==



「あの時のままの、じゃなくなっていても」



== そらからのおへんじは ==


== いつもかえってきている ==



「俺の願いは、絶対・・・絶対、届いている・・・絶対、叶う・・・」



何の根拠もないけれど


何かに促されるように


背中を押されるように


(気のせいかもしれないけれど)


俺は立ち上がって、大きく息を吸い込んで


一瞬、息を止めた。


・・・


そして


「絶対、叶っているんだぁーーーーーーー!!!」


雲ひとつない、キレイな突き抜けるような青空に向かって


俺は、ありったけの声量で叫んだ。

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