第42話 普通に出来るコトと俺

普通に過ごす


普通に過ごす


・・・


ブツブツ言いながら難しい顔をしていた俺は


店員に声をかけられるまで気づかず


はっとして、慌てて支払いを済ませて


足早にコンビニを後にした。


「ダメだ、いくら考えてもわかんね・・・」


昨日今日ほんの少し一緒にいただけなのに


普通に過ごすっていう行為?定義?っていうのが


まるでわからない。


ってコトに


何の楽しい要素もない


そんな絶望的な気がしてならない。


気の利いた会話


なんて出来るハズもなく


”目の前のヒトを喜ばせるコト”って


意外と


俺だけの


俺自身のチカラだけじゃぁ


「・・・何も出来ない、んだな・・・」


そういえば


手紙をくれていた


「いつも元気とシアワセなキモチをたくさんもらっています」


ってよく言ってくれていたな。


俺は何をしてたっけ。


どんなコトバを伝えてたっけ。


どんな表情を見せてたっけ。


「それって結局、、作られた俺、いや、キャラクターなだけじゃないか。


俺自身なんかじゃない」


本当の俺からは


俺自身のコトバや表情なんかじゃ


そういう眩しいキモチには


けっしてなれないんじゃないのか。


こんなにヘタレでポンコツで


まるでいいトコなし、じゃないか。


「はぁ-・・・」


こういう時こそ、青い羽根にお願いするべきなのか?


”あの子を喜ばせたい”って。


・・・


「でも、その後はどうするんだ?」


喜んでもらったら終わり・・・?


それで終わり?


俺は満足なのか?


あの子は本当にそれを望んでいるのか?


・・・


「はぁ-・・・」


こんなループを繰り返してばかりで何も解決しないまま


屋上に辿り着いた。


ゆっくりドアを開けて思わず


「ただいま」


って言ってしまった。


屋上の真ん中にペタンと座っていたが振り向いて


「・・・おかえり」


って返してくれた。


今日一日、気が気じゃなかったけれど


黙っていなくならないって約束したからか


(・・・いや、たまたま大丈夫だっただけか)


ちゃんとまだいてくれたコトに心底ほっとした。


「ほら、おみやげ」


「!・・・ぷりん!」


不思議だけれど


あれだけ表情や感情がわかりにくかったのに


出会った頃よりも、笑顔が多くなってる気がする。


よっぽどプリンが好きになったのか


目がすごく輝いているようで


見ている俺まで思わず嬉しくなってしまう。


コトバも少し増えてきたような・・・


って、


何やってんだ。


「わわっ!ちょ、ちょっと待って待って!ちゃんと開けてからだろ。お、おいおい!カップをそんなに振るんじゃないっって、あーーー!せっかくの固いプリンがぁーーー!なめらかプリンになっちゃう、って、あーーーもうっ!」


はしゃいでいるに振り回されてしまうけれど


なんか


楽しいな。


嬉しそうなを見てると


なんか


嬉しいな。


「だから、ちゃんとココ、ほら、座って!そう、じゃぁフタを開け・・・あ!ちょいまち!・・・って、ああああ遅かったあーーー、こぼれてるこぼれてる!ちょ、ちょっとそのまま!そのまま止まって、あ、そう!まっすぐ持って、いや、ちが、逆さまって、あーーー!!もう、なんでそうなるんだよ、もったいないなぁ・・・っ、そ、そんな目で見るなよ・・・お、怒ってない、怒ってないからさ・・・あ、ほ、ほら、これ!まだあるから、な。ちゃんと開けてからな、ま、待って待って!ちゃんと渡すから。・・・ったく、・・・はい、どうぞ。」


・・・


やっと落ち着いた。


なんなんだよまったく。


こんなコトでもう大騒ぎだよ。


ほんっと、嬉しいんだな。


好きなんだな。


・・・


「あ・・・」


これ、って


もしかして


「喜んで、くれてるのか・・・?」


たっただけれど


俺のしたコトでも


こんなに喜んでくれてるのか。


特別でもなんでもない


俺でも普通に出来るコトで


今目の前にいるが喜んでくれている。


俺はそれを目の前で感じるコトが出来て


こんなにも嬉しくてシアワセなキモチをもらっている。


特別でもなんでもない


俺でも出来るコトで。


いや


と出会って


のコトをほんの少し知って


とこうしてココにいる


だ。


「これって、ありえないくらい特別なコトなのに・・・すげぇよな。」


特別でもなんでもない今の俺にも出来るコト


特別でもなんでもない普通で当たり前のコトだけど



ただただ


目の前にいてくれるに喜んでもらいたい


そう思わずにはいられない、って


特別な願いのような思いだけれど


それこそが、だった。


ああ


俺、知らなかったよ。


いや


気づかなかったよ。


ヒトを喜ばせるコトって


ってコトばかり


考えて、悩んでいたのにな。


こんなに喜んでくれているだけで


俺の方こそ


嬉しいよ


楽しいよ


シアワセなキモチをたくさんもらえている。


俺、知らなかったよ。


気づかなかったよ。


「・・・ありがと、な。」


聞こえないように言ったつもりだけれど


きっとあの子には


伝わってる


そんな気がする。

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