第40話 何かしてあげたい俺

に伝えた。


まだ消えないでほしい


俺のいないトコロで消えないでほしい、っていうコト。


ちゃんと見送るから、見送りたいから


俺が最後まで一緒にいたいから、っていうコト。


それまで、いっぱいいっぱい話そう。


一緒に行きたいトコロへ行ってみよう。


毎日プリンを食べよう。


それから


・・・


その場で思いつく限りのコトを言ってはみたけれど


「いつ消えるかもわからないのに、にとって本当にして欲しいコトって


 なんなんだよ。わかんないよ。俺は、何をしてあげられるんだよ。」


もしかしたら、こうして仕事をしている間にも消えてしまうかもしれない。


そんなコトを思うと、こうしてる場合じゃない!


・・・


なんて


「無理だよ。今の俺には、仕事をないがしろになんて、出来ない・・・」


アタマを抱えてばかりだった。



「よぉー。久しぶりー!」


「お、おま!なんでこんなトコロにいるんだよ。」


「えーー!?久しぶりなのに、何そのつれない態度。」


「い、いや、いつも忙しくしてるから、その、びっくりしたんだよ。」


「おまえなぁ、多少忙しくなっても、俺はぜんっぜん変わってないし。たまにしか会えなくても、おまえの様子見てたらなんか、なー・・・」


(な、なんだよ、その見透かしたような目は)


「・・・なぁ、おまえさ」


「ん?なになに?」


「誰かに何かしてあげたい、って思う時、ある・・・?」


「え?誰かって、誰に?」


「え?・・・ええっとー、その、た、例えば、友だち?とかで時間があまりなくて、その、少しでも喜んでもらえるコトっていうか、何か出来るコトってないのかなー、なんて、ちょっと考えてみたり・・・」


「友だち、ねぇ・・・」


(絶対ダメだろ・・・怪しさ満点だし・・・)


「んーー、そうだなぁ・・・」


(変な疑いもなくホント親身に考えてくれるのな、おまえは)


「あ!そういえば思い出した!この前、生配信の番組に出てさ」


(なんで話をそらすんだよ)


「その時に、この前のを見たっていうヒトからメールが来たんだよ!」


「え!?な、なんて!?なんて言ってた!?」


思わず、食い気味で聞き返してしまった。


「実はそのヒト、そのが目の前から消えたあと、それがいた場所に行ってみたんだって。でも何もいなくて帰ろうとしたんだけど・・・」


「そういうのいいから!なんだったんだよ。」


(もういつものくだりとか、どうでもいいし)


「・・・拾ったんだって・・・」


 (・・・拾ったって、まさか・・・)


「・・・青い羽根・・・」


「・・・マジ・・・?」


「マジ!『本気と書いて読み方はマジ!』」


(はいはい)


「で?で!?どうしたって!?願い叶えたって!?」


思わず、あいつの両肩を掴んで尋常じゃないくらいガクガク揺さぶっていた。


「お、おい!ど、どうしたんだよ。お、落ち着けって!」


あいつに両手を振り払われて、ハッと我に戻った。


「ご、ごめん。なんかちょっと、情緒っていうか、調子悪くって・・・はは。」


「おまえさー、大丈夫?パッと見、なんか思い詰めてる感じしてたけど。」


(そういうトコロ、するどいよな、ホント)


「いや、ホント、大丈夫だから。ホント、ごめん・・・で、その青い羽根のハナシだよ!それからどうしたんだよ。」


「あ、そうそう!それを見て、やっぱり見間違いじゃない、この青い羽根が証拠だ!って思って、もと来た道を戻ろうとしたんだって。そしたら足を滑らせちゃって」


「え?何?ケガしたの?」


あいつは、口元に人差し指で「しっ。」と、俺のコトバを遮った。


少し声のトーンを落として、小声で


「斜面を滑り落ちた時、咄嗟に『助けて!!』って思わず言っちゃったんだって。そしたら、一瞬ふわっと感覚がなくなった感じがして、気づいたら斜面下の平らなトコロに着いていて、かすり傷ひとつなかったって。」


「・・・それってまさか」


「たぶん、、じゃね?」


(・・・ごくり・・・)


「もちろん、俺はなんてハナシはしてなかったから、そのヒトはに遭遇した不思議体験っていうコトでハナシをまとめていたんだけどな。UMAか、はたまた宇宙人か!?・・・だって。」


「えーー、なんでそっち側に行っちゃうんだよ。」


「拾ったはずの青い羽根はなくなっていて、ひょっとしたら、そのが姿を見られたコトを隠すために幻覚を見せたんじゃないか!?・・・だってさ。」


あいつは、やれやれ、と言わんばかりに苦笑いしていた。


「なんだ、それ。」


俺も思わず、呆れて苦笑いしてしまった。


「まぁ、かなりぶっ飛んだ展開になってるけれど、トークが盛り上がるネタにはなったし、ありがたかったけどな。いずれにせよ、は実在した!だよな。」


「そういうコトに、なる、かも・・・な。」


あいつはいつものドヤ顔で、なんだか嬉しそうにウキウキしていた。


「あ!ごめんごめん、何だっけ?その友だちに何かしてあげるとかなんとか、だったよな?」


「あー・・・、もういいよいいよ。ちょっと聞いてみたかっただけだから」


「俺なら絶対!『普通に過ごす』の、一択だな!」


(・・・すっげぇドヤ顔・・・)


「普通に、過ごす・・・って、そんなコトでいいのか?」


「特別なコトなんてしなくても、が尊かったりするんじゃね?友だちなんだからさ。」


「普通に、ねぇ・・・」


って、なんなんだよ)


「まぁ、あんまり思い詰めるなって!お前がそんなんじゃもきっと元気でねぇぞ!」


「おま!ち、ちげぇし!た、ただのちょっとした知り合いっつーか・・・」


(だめだ、怪しさ全開だし・・・)


「まぁ、お前がなんて、ちょっと嬉しいよ、俺は。大丈夫だって!ちゃんとキモチ伝わるって。でな。ははは。」


「なんだよ、それ。・・・まぁ、さんきゅ、な。」


あいつは何も聞かずに、ただただ俺の背中を押してくれている。


俺はあいつに、のコトを隠しているのに・・・


(ごめん、いつか絶対話すから、な。)

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