第10話 抑え込んで

「へー、そうなんだ・・・」


(あー、・・・ですよね)



年甲斐もなく(なんて全然思ってないけど)


声優の「推し」を作ってしまった。


毎日毎日、


シアワセなキモチや癒し、キラキラした言葉を


たくさんたくさん、もらっていて(と思っていて)


本当に、


元気と、明るいエネルギーがわいてくる!


と、


あまりにもこの熱量を持て余してしまったのか


つい、うっかり


身近な友人に(しかも熱く)語ってしまった。


ら、


この薄っぺらいまったく興味がない反応を


頂戴したわけで・・・


「それってさあ、いわゆる現実逃避ってヤツじゃない?」


(う・・・)


「まあ(ため息)悩みもヒトそれぞれだけど、

 ちゃんと地に足つけて、向き合っていかないと」


(何も解決しないよ・・・ですよね)


「何も解決しないよ?」


(おっしゃる通り・・・)


「うん、わかってる。あ、ありがとう。」


(本音は、その歳で妄想して夢みてるのはイタイ、・・・ですよね)


・・・


どうしても、自分で自分を傷つけてしまう。


        ★


目の前のコトには、もちろん


それこそ(いつも)


全力で


向き合うべきコトにも、ちゃんと向き合って


『逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ』のときにも


(なんとか)こらえて、踏ん張って


くじけるコトがあっても


明けない朝はない、やまない雨はないよと


励まし、応援されてきたキモチにも応えたくて


頑張ってるよ、(これでも)精一杯。


ヒトからしてみれば、なんてコトはない


ちっぽけな悩みや不安なのかもしれない。


いつも、まだ起こってもいない先のコトまで


考えて


考え過ぎてしまって


勝手に不安に陥っているだけなのかもしれない。


ひょっとしたら


その奥底にあるモノってのは


案外


『わがままで強欲なモノ』


だったりするのかもしれない。


(いやだな、こわいな・・・)


        ★



ヒトリで布団に横たわっていると


いろんなコトでアタマがいっぱいになる時がある。


暗いコト


明るいコト


不安なコト


シアワセなコト


全部がとめどなく


ぐちゃぐちゃになって浮かんでくる。


ワケのわからない


真っ黒なぐるんぐるんしたものが


カラダの中でどんどん広がっていって


そうして、思考が止まってしまう。



もしも


自分の奥の奥の


深いトコロにある


ぎゅっ、と感じるトコロを


むき出しにして生きていけたら


(それは、シアワセ?それとも・・・)



いつだって


『答えのない現実』ばかり。


なにが正しくて、なにが間違い?


どれも間違いじゃないのかもしれない。


どれも正しくないのかもしれない。



そうやって行き詰ってしまうたびに


いつも


ずっと思っていた。


「空を飛べるようになりたい」


自由に、広い空に飛び出していったら


この世界はどんな風に映るんだろう。


ワタシはいったい


何をするんだろう。


どこへ行くんだろう。


何を探して、何を見つけるんだろう。



自分の奥の奥にある


ぎゅっ、と感じるトコロに


従うままに・・・


(それは、シアワセ?それとも・・・)



だから


だからワタシに


「翼をください」



天井に向かって両手を伸ばして


思わず発した言葉は


もちろん


リフレインされるワケもなく


空気に混じって消えていった。


(まさに現実逃避、イタイ妄想だよね・・・)


脱力した両手を、パタンとおろした。



いつまでも


ありえない現実に手を伸ばして


つかめもしないモノをつかみたいと


願ってしまう。


何も解決しないのに・・・




眠い・・・


・・・


・・・


・・・


・・・・・・・・・・・・


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