第7話 ファンレターを出した

「絶対に、変なおばさんからの重いファンレター、キモイって思われてる」


キモチが高ぶっていた勢いとはいえ


ファンレターを出してしまった。


しかも


若い子に人気の声優さんに。


(ホント、血迷ったというか、浮ついていたというか・・・)


書いている時は、ずっと口角があがりっぱなしになるくらい


シアワセなキモチに満たされていたのに


(この姿を想像するだけでキモイか)


もう、半分後悔でしかない。


        ★


いきなり手書きで書くのは、絶対支離滅裂になって


何枚も書き直しになるのは目に見えていた。


「とりあえずパソコンで打って読み返しながらでしょ!」


思いのまま書き綴っては、何度も何度も読み返して


削除しては書き足し、削除しては書き直し


余白をとりつつ、A4版2枚になんとか収めて


便箋びんせんに書き写した。


ら、


「は、8枚・・・」


1枚当たりの行数が少ない便箋びんせんだからとはいえ


読む側にとって、はじめましてのお手紙が


いきなり8枚っていうのはどうなんだろう。


「絶対、読んでもらえなさそう・・・」


苦笑でゆがんだイケメン声優の顔を想像したら


もう泣きたくなってきた。


「あとは、寛大な優しさに(勝手に)すがるしかない」


読まれるはずもなく、捨てられてしまおうが


マジでキモイ、重い、と思われようが


「アタシがそれを、目にすることはないし」


そこは(無理やり)ポジティブシンキングで


悪い意識を手放そう。


(って、自己啓発本の受け売りかい)



でも



書いている時に


シアワセを感じていた感情の心地良さは


何より


今の自分を癒してくれていたコトは確か。


(なんか、ちょっと元気になれて、・・・嬉しいな)



事務所宛てへの長い住所を表書きして


最後に


鹿島柊二かじましゅうじ 様


しるす。


(いいオトナが、美文字とは言い難いこのクオリティ)


もう泣きたくなってきた。





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