第4話 推しというモノ

「なに、これ・・・」


暇つぶしに観ていた動画投稿サイト。


いつのライブ映像だろう。


公式サイトのじゃない。


(誰かがご丁寧に、DVDからあげてくれたのか)


(ダメなやつじゃん)


と、思いつつも・・・観てしまう。


見たことない、アーティスト?


(ん?)


「声優・・・?」


(え?)


声優さんって、歌って踊るの?


こんな大きな会場で?


何万人?ファンの熱狂もすごくない!?


てか


なんか、すごくない!?この人たち・・・


なんか、良くない!?この人・・・


この人・・・


良くない?


この人・・・


好き、かも・・・?


好き


かも・・・



   ★


先の見えない世の中に


減っていく預金残高。


あれやこれや


考えれば考えるほど


明るいキモチにはなれなくて。


毎日聴いていたラジオから流れる明るい声も


ワタシ以外のヒトからのメッセージやリクエスト曲も


ぜんぜん、聴きたくなくて。



・・・


閉ざす


・・・



今、この世界で生きているワタシは


『特別』でもなんでもない。


『選ばれたヒト』でもない。


あくまでも


大多数の中の


ただのヒト。


一生懸命に、目の前のコトに向き合い


時には立ち向かい、くじけたりもする。


大きなチカラにも


些細なウワサ話にでさえも


振り回されてしまいがちな


弱いヒト。


それでも


ささやかな生活を


人生を守るために


優しく、穏やかに、楽しんで


そして


シアワセに


過ごしていきたい


生きたい


と、願っている


ただのヒト。


だから


『特別』や『選ばれた』って思えるヒトに憧れる。


本当はが欲しくて欲しくてたまらない。


うらやましくてしょうがないんだと思う。


でも


きっとワタシはじゃぁないから


今も


今までも


ずっと



なんだと思う。




「腰、痛ぁ・・・パソコンやりすぎ・・・」




【声優  〇〇ライブ キャスト】検索


ぽちっ、と。


【出演者一覧】


 ・・・


鹿島柊二かじましゅうじ



『特別』で『選ばれたヒト』の宣材写真が


強く優しい眼差しで、こっちを見つめている。


写真だけどね。


(眩しすぎる)

















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