第46話 米之宮学園第一女子高等学校
米之宮学園第一女子高等学校。
この辺りの地域では名の通った進学校であり、お嬢様学校である。
品の良さ、制服の可愛さ、イチジョは男の憧れ。まさに聖域だ。
【女しかいないぞ!! なんだこのいい匂いのする場所は!!?】
ね、なんかいい匂いするよね。
【ちょっとクンカクンカしてくる】
帰ってこなくていいからね。
……にしても華やかだ。
前だったら場違いって思ってたかもしれないけど、今は女子力アップしてるからなんとなく受け入れられる。
ハナがここの制服着たら似合うんだろうな。
……あーヤバい、照れる。
「……ナツ、私の事考えてる?」
「えっ!? ……うん、ハナの制服姿を想像しちゃってて……似合うだろうなーって」
「ふふっ、私も同じ事考えてた。ナツ絶対に似合うなって♪」
「あははっ、楽しみだね」
「あんた達仲良すぎー。まぁ私とキーちゃんも負けてないけどね」
「へへっ……だと良いな」
しかしまぁビルみたいな校舎だな。
エレベーターが五つもあるよ……
「わー、おっきいねー。何階建てなのかな」
「八階って書いてあるぞー。お嬢様学校だなー……ハンパないわ」
イチジョの学費は滅茶苦茶高いと聞く。
二人ともいいトコ育ちなのかな?
「……あれ? アンタもしかして北中の七番?」
「あー……まぁそうっすね」
ニコちんがユニフォームを着た人達に囲まれている。
あれはバスケかな?
「なになに? イチジョに来るの!? 橘に誘われてるって聞いたからてっきりそっちに行くのかと思ってた」
「いやー……学力がなくて。でもここ受けられるみたいなんでここにしました」
「マジ? ユニフォーム余ってるから練習来なよ! お友達ー、七番借りてくねー」
「やっ!? ちょ、ちょっと── 」
あっという間に連れ去られるニコちん。
大丈夫かな……
「ニコちんって有名人なんだねー。知らなかったよ」
「ニコちゃんは全国でもトップクラスの選手だから。雑誌とか何回も乗ってるんだよ。私達の中学はニコちゃんが入った時から全国大会に出てるの」
嬉しそうに話すキーちゃん。
離れていた間も、ずっと想い続けていた事が伝わってくる。
「だからね、私……バスケの事勉強したんだ。その……マネージャーとかだったらニコちゃんの役にたてるかもって。でも私なんか……やっぱり釣り合わないよね、あはは……」
「キーちゃんはニコちんの事をどう思ってるの?」
「…………好き、だよ」
「ふふっ、じゃあ両想いだ♪」
「……そうだね……うん、両想い……だね♪」
なんか良いなぁ……
今この瞬間でしか体験できない事ばかりで、大人になってからじゃなきゃ気が付かない。
二回目の人生だからこそ味わえる高揚感。
本当に、幸せ者だ。
「ナツ嬉しそうだね。どうしたの?」
「……素敵な恋人と友達に恵まれて、幸せだなって思ってた」
「嬉しい事言ってくれるなー? このこのー♪」
ほっぺたグリグリ。
きっとだらしない顔をしてるんだろうな。
「あれっ!? もしかして夏ちゃん!!?」
「えっ……?」
二回目の人生、なかなかすんなりとはいかないもので。
「えっと……涼子の姉だけど……覚えてない……かな?」
身体が震える。
大丈夫だよ、私。俺がついてるから。
リョウコ。
私を暴漢から守ってくれた友達。
目の前で凌辱され、保護された後に自殺した。
あの時の自分の行動が正しかったのか分からない。
あのまま殺された方が良かったのでは……なんて思う時もあった。
「ちょっと話したい事があるんだけど……お友達は待っててくれるかな……?」
「ナツ……リョウコちゃんって……」
ハナが不安な顔で見つめてくる。
今度はこっちからほっぺたをグリグリ。
「私は大丈夫。キーちゃんと待ってて」
人気のないベンチに座り無言の時間が続き……しばらくして、涼子のお姉さんが口を開いた。
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