第31話 途方も無い気持ち達
駄目だよ、やめろ!!
やめてくれっ!!!
「撃つなーーーー!!!!」
「ナツ、大丈夫だから落ち着いて。ね?」
「ハァハァ……ハァハァ…………」
引き金を引いた瞬間、視界が切り替わる。
涙と汗が止まらない。
痛いくらいに鼓動を感じる。
なんなんだよ、一体……
この子が何をしたって言うんだ。
どうして、どうして……
「どうしてこんなにも辛いんだよ……クソッ……」
「ナツ── 」
「お嬢様!!」
ハナより先に、フジさんが俺を抱きしめる。
驚きと、物理的な衝撃。
「フジさん……」
俺の顔に滴る涙。
フジさんが……泣いている?
「もういいんです……お嬢様、何も考えないで下さい……全てを背負うには……貴女の背中は小さすぎます」
「でも……」
「泣いて下さい、甘えて下さい、頼って下さい。お嬢様は昔から抱え込む癖がありました。我々に気を使って……無理して笑っているのを、ただ見守る事しか出来ませんでした。貴女が周りを大切にしているように……我々も、貴女が大切なんです」
そうだよな……
全部背負うっていうのは、抱え込むって事じゃない。
葉月夏として生きていくって事は……
辛い事、苦しい事は自分で消化して。
しきれなかった分は、誰かに甘えて。
そうやって、二人分の人生を歩む事。
先程視界が切り替わった瞬間、大量の感情が流れ込んできた。
十四年分の、途方も無い気持ち達。
正直辛い。
だから泣こう。
甘えよう。
それでいいんだから。
「っ……ぐすん……」
一度崩壊すると、涙は止まらないもので……
大きな声を出して、泣き喚く。
ハナとフジさんが優しく背中を擦ってくれて、それが涙を助長させる。
どれくらい泣いたのか分からないけど、泣き疲れた頃には頭の中は冷静になって……
あれだけ人前で泣いてしまった事実に、顔が熱くなる。
俯いたまま、顔をあげることが出来ない。
「……ナツ、もしかして恥ずかしいの?」
コクリと頷くと、ハナは部屋の片隅からあるモノを持ってきた。
「コレ、使う?」
「……使う」
「…………ハナ様、それは一体なんですか?」
「ひょっとこのお面だよ。恥ずかしかったり、言いにくい事がある時は私達これをつけて言うの。……よし。ついたよ、ナツ」
「……泣きすぎました。ごめんなさい」
「泣いてるナツも可愛かったよ」
「……へへ」
「確かに、恥じらいが無くなりましたね」
「フジさん、さっきはありがとう。おかげで吹っ切れました」
「いえ……私は何も……」
【この話に男なんぞいらん!! 出てけ出てけ!!( ・`ω・´)】
「……」
……見られてるんじゃない?
【いや、そんな筈は……(ヾノ・ω・`)ナイナイ】
「……」
……睨みつけられてるけど?
【(´・ω・`)】
このままだと右肩が睨み殺されそうだ。
確かめてみるか……
「フジさん、どうしたの?」
「……不穏な気配がしまして。ちょうどお嬢様の右肩辺りに」
うん、バレてるな。
【(´・ω:;.:...】
神をも感知するフジさん。
今後、何があっても俺達を守ってくれるだろう。
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