第4話 My feeling

 西の空に太陽が沈み、街灯に明かりがつき出す。冬は日が暮れるのが早い。

 夏ならまだまだ遊べる時間なのに、少しもったいない感じがする。


「そろそろ帰ろうか?」と彼が尋ねてくる。

 でも、私はまだこの時間を終わらせたくない。


 だけど、私の口からは「そうだね」と真逆の事を言っている。

 私たちは繁華街を後にして駅に向かう。駅に向かう、その間、色々な人とすれ違う。


 子ども連れの家族。背広姿のサラリーマン。自転車の前かごに買い物袋を乗せて帰路を急ぐ主婦。

 そして、まもなくデートを終える私たちカップル。

 私の心が段々寂しくなっていく。


 駅に着くまでの間、彼は私に色々話し掛けてくれるけど、私はあいまいな返事で答えを返している。

 彼は私の生返事に気付いているけど、それでも話を続けてくれる。

 優しいけど優しすぎる彼。もう少し強引でも良いのに……


 駅に着き、ホームに来ると直ぐに電車が来てしまい、私と彼はそれに乗り込む。

 私は心の中で『少しでも長く、デートの時間を楽しみたいのに……』と思ってしまう。


 軽快なリズムで電車は走る。ロングシートの端の方で座る私たち。

 車内は混み合っているが、会社員の割合が多いため、車内は比較的静かで有る。


 後十数分で、私と彼の時間が終わってしまう!

 それを終わらせたくない私は、そっと彼の方に体を向ける。

 すると、それを受け止めてくれる彼!!


 車内で私たちだけの時間と空間が生まれる。

 2人とも無言で……只肩を寄せ合う。

 適度に混雑した車内だけど、それを見る人は居ない。

 普段通勤・通学している人にとっては、これが当たり前の光景だろうか?


 一時の幸せを楽しんでいると無情にも、次駅が彼の降りる駅で有る、アナウンスが流れる。

 しばらくすると、彼が降りる駅に電車が着いてしまう。

 彼が席を立ち上がろうとした時、私はそっと、彼の耳にささやく。


「まだ、終わらせたくない……」


 小声で「えっ」と言いながら私の顔を見る彼。

 だけど彼の顔は笑っている。


「なら、お前の家まで送って行くよ!」


 待ち望んでいた答えに、私は思わず彼の胸に顔をうずめる。

 そして、それを恥ずかしがる彼。

 普段はしっかり者なのに、私の前では恥ずかしがり屋さんになる。


 まだ、私たちの時間は終わっていない。

 そして、彼に私をもっと見てもらいたい! 

 私の良い所と、そして少し悪い所も……


 電車内の時間も終わりを迎え、私の降りる駅で一緒に降りて、私の家まで彼と歩く。

 空は完全に日が暮れて、少しだが星空が見える。


 風も吹き始めて、少し風の強い中を歩く私たち。私の方からそっと手を出してみる。

 それを彼は、そっと手を握ってくれる。付き合い始めてから初めて手を繋ぐ。

 風は冷たいけど、手と心は常夏のように暖かい。


(そろそろ、次のステップに行ってみても良いかな?)

(私は彼の事が大好き! 彼も、きっと大好きだよね!)


(もう少し、歩いたら聞いて見ようかな?) 

(絶対、私の気持ち、受け入れてくれるよね!)


 春が来た時に桜が咲くように、私たちも満開の愛情が、咲くと良いなと私は感じた……

 この関係がずっと続きますように!


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