第4話〜優しい天使〜

あの後、クラスに戻った俺は案の定皆から質問攻めにあった。あいつら、こんな時だけ話しかけてきやがって。

ま、それはそれとして


「ようやく放課後だ……今日は疲れた、さっさと帰ろう…」


ここに残っているとまた絡まれる。昼間も


「あっ、おい明星!お前あの天使様とどう…」


「あ!明星君、宵空さんとどういう関係なの?」


「あっ、あけほry」 「あけry」


こんな感じだった。揃いも揃って同じことしか聞いてこない。botかなにかなのだろうか?


そうやって思い出して鬱になりつつ廊下に出ると、今日何回目かもわからないいつものが来た。


「おい、お前天使様とどういう関係だよ!…答えろよ!!おい!」


「昼間に死ぬほど説明したがな。ただの友達だ文句ある?」


「はあ?お前みたいなやつに友達が出来る訳がねぇだろ?なんか弱み握って脅してんじゃねぇのか!?」


いるいる、こういうやつ。心外だが俺自身も友達が出来るとは思ってなかったからなぁ……気持ちはわかる。


目の前の男を若干悲しくなりつつ見ていたら、俺の後ろから透き通るような声が聞こえた。


「私が無理言ってお友達になってもらったのですが、私の大事な友達に何か用ですか?」


「よ、宵空さん…」


「それより、聞き捨てならないことを聞いたのですが?誰に友達が出来るわけがないのですか?」


透き通ってはいるが、絶対零度。こいつほんとに彩月か?…もしかして女性って怒らせるとやばい?


「私は少なくとも、あなたのように下心丸出しで平気で人の悪口が言える見る目のない人間より、純粋な善意で見知らぬ人に優しく出来る怜侑君の方がよっぽど人に好かれると思いますけど。」


「友達にすらなってない人が、勝手に私の大事な友達を侮辱しないで下さい。」


ここまで言ってくれるのは嬉しいけど、実際にされると割と恥ずかしいのな。


「す、すみません…お、おれが悪かったです…」


「謝るなら私ではなく怜侑君にだと思いますけど。まあ、彼が謝って欲しいかどうかまでは知りませんが。」


「要らんな、たった今彩月の言葉で満足した。それより俺はそろそろ帰るけど、彩月はどうするんだ?」


「あ、帰ります。テスト、どうでした?」


「普通。赤点は回避したから良かったかな。」


「…もしかして赤点ギリギリなの?」


「ギリギリってことは無いけど良い方ではないと思うぞ。」


そんな話をしながら、俺達は何事も無かったのように去って行った。正直、これ以上時間を使いたくないって言うのもあるし、彩月が怒ってくれたから満足してしまったのもある。



下駄箱辺りまで来た途端、彩月が口を開いた。


「あの…ごめんね、迷惑だった?」


「ん?いや、助かったし有難かったよ。ありがとう」


「そっちじゃなくて、友達になったこと。嫌な気持ちになったかな、って」


気にしてたのか。彩月は悪くないだろうに、律儀な子だな。


「悪いのはあいつであって彩月じゃない。彩月が友達で良かったよ。」


俺は心からそう思うよ。ああやってかばってかれたやつは、今までいなかった。


「そっか。なら良かった!ねぇ、一緒に帰ろ?家、近くだし」


「良いよ、帰ろうか。今日は仕込みだいたい終わってるしゆっくり帰れるし」


そう言って俺達は、笑い合いながらゆっくりと帰っていくのだった

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