-98- 血に刻まれた因縁の地Ⅰ〈突撃〉

「ダンジョンが騒がしくなってきたな……」


 紅花たちが突入した時よりもモンスターの数が増えている気がする。

 まるであの龍もどきの出現に呼応こおうするように……。

 でも、方針に変更なし!

 ただ突き進むのみ!


「消し飛べ! クリムゾンブラスター!」


 アイオロス・ゼロリペアの胸部に装備された赤い宝石から紅色のDエナジーが放たれる。

 これは蟻の巣のボスとも言える女王アリの人型昆虫から得たパーツだ。

 あいつが使っていた時と同じように宝石から強力なDエナジーのビームを放つことが出来る。

 そして、放った後はしばらく輝きを失い、使うことが出来なくなるという点も同じ……。


 これまでのアイオロス・ゼロは強力なDエナジー武器を持たなかったから、強敵に出会うと決まって接近戦を仕掛けることになった。

 もちろん、アイオロス・ゼロ自体が機動力が強みのDMDだからそれは間違っていない。

 でも、リペアとなったゼロはディオスのパーツが多く使われていて、以前ほどの反応速度と機動力は発揮出来ない。


 だから、ゼロリペアは高火力の射撃武器を多く装備している。

 アイオロス・ゼロのもう1つの強みである高性能なジェネレーターを生かして、ハイスペックなDエナジー武器を使い分けて戦うんだ。

 赤い宝石から放たれる『クリムゾンブラスター』以外にも、両手にはDエナジーライフルの強化版『Dエナジーマグナム』を持っている。

 威力もさることながら貫通力に優れるので、群がるモンスターを一気に撃破出来る。


 背中に装備されている『Dフェザーユニット』は、新型機の開発に使うために外された黒い翼『グラビティウイング』の代わりとなる次世代推進器だ。

 何が次世代なのか私にはわからないけど、加速がより滑らかになっているのはわかる。

 こう……ぶわっと噴射して進むんじゃなくて、ふわぁっと押し出されるような感覚。

 まだ慣れないけど、慣れれば従来のものより扱いやすいと私は思っている。


 翼のように2枚装備されているDフェザーユニットの間には、『スタビライザーソード改』がマウントされている。

 蟻の巣で使ったスタビライザーソードの改良版で、大きな変化はないけど全体的な性能がアップしているらしい。


 両腕には『ジュエリーボックスE』を装備している。

 EはEasyイージーの頭文字で、オリジナルに比べて少し大型化している。

 射撃・斬撃・防御を小さなユニット1つで切り替えられるオリジナルのジュエリーボックスは、いわば腕時計のように精密なパーツの構成が必要で、量産するにはあまりにもコストがかかる。

 そこでユニットを大型化させ、ユニットそのものをモードに応じて変形させることで射撃・斬撃・防御を使い分ける。

 エナジーの出力はオリジナルと遜色そんしょくなく、安定感は増しているので頼れるマルチプルウェポンになっている。


 腰の後ろには『Dメタルランス』をマウントしている。

 オーガランスは開発中の新型機のメイン武器として新たな改造を加えている最中で、持ちだすことが出来なかった。

 代わりに形状が似ていてそれなりに頑丈なこの槍を持ってきた。

 特に特殊な機能はなく、純粋なランスとなっている。


 残りの武装は肩に装備された『Dエッジミサイルポッド』だけど……。

 これは完全機械体および覚醒機械体に対抗するための武器だ。

 数に限りがあるし、今は温存しておこう。


 いくらモンスターが増えていると言っても、レベル50未満の浅い場所なら切り札を見せるまでもない!

 通常の武器とマギアントたちでどうにでもなる!


 絡みついてくる黄金のヘビをランスで貫き、転がりながら突進してくる鋼の外皮を持つアルマジロをマグナムで撃ち抜く。

 マギアントたちに気を配りつつ、奥へ奥へと進んでいく。


 警戒すべきは藍花の機体を押さえつけていた透明のモンスター……。

 ゼロリペアの頭部にゴーグルのように装備された増設センサーカメラには、透明化したモンスターを見破る機能が搭載されている。

 これはあのトウカイカの表皮を研究した結果得られた技術だ。


 まだ試作品で世の中には出回っていないけど、テスト中に出会った透明なモンスターは全部見ることが出来ている。

 それなりに信頼のおける装備であることは間違いない。


 でも、マギアントたちにはこれが装備されていないので、透明化モンスターには対応出来ない。

 こればっかりは私が責任をもって排除させてもらおう。

 そう意気込んだのはいいんだけど、透明化モンスターは一向に出てこない。

 レベル50を超えて深層に足を踏み入れても、モンスターが強くなるだけで透明な個体は見つからない。


 あの完全体のようにコア付近で待ち構えているのかな……?

 現在地はレベル60付近だ。

 もうじき紅花機がいるところに到着する。


『ええい、どいたどいた!』


 まん丸い球体から足の生えた奇妙なタコのようなモンスターの足をスタビライザーソード改でぶった斬り、その足の付け根にあった口からクリムゾンブラスターをぶち込んで撃破する。

 こいつも頭の部分が装甲に覆われている混成機械体だけど、装甲のない部分を狙い撃てば特に問題なく倒せる。


 完全体や覚醒体ともなれば全身が装甲で覆われているから厄介なんだけど、私はあの藍花を捕獲した龍もどき以外完全体を見ていない。

 深層ダンジョンと言っても、敵の強さはこの程度なのかな……?


 いや、慢心は良くないな。

 こういう時ほど後からヤバいのが出てくるんだ。

 早く紅花と合流して2人で龍もどきを狩りに行こう。

 そして、藍花を助けてこのダンジョンを抹消してしまうんだ!

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