第4章 ブラッドプラント防衛作戦
-40- エマージェンシー
「今日は久しぶりのダンジョン探査だ!」
日曜日、マシンベースのエレベーター内でステップを踏む私。
昨日は晩御飯もみんなで食べて、楽しいマシンベース見学になった。
今日からは気持ちも新たに少し難易度の高いダンジョンに向かう予定だ。
新しい武器たちもいよいよ実戦デビューになる!
「おはようございます! 育美さん!」
「おはよう、蒔苗ちゃん」
いつものコントローラーズルームに入り、元気よく挨拶をする。
その瞬間、マシンベース内にサイレンが鳴り響いた。
「えっ!? わわわっ、私なにか変なものに触っちゃいましたか!? それとも……襲撃!? マシンベースにモンスターが攻めてきたとか!?」
「マシンベースが襲撃された時のサイレンはこんなもんじゃないから違うわね」
育美さんが手元の端末を操作し、部屋の壁に送られてきたであろう情報を表示する。
そこには『
「このマシンベースが管轄するダンジョンでモンスターの大量発生が起こったことを知らせるサイレンだったみたい。でも、大量発生の初期段階でサイレンを鳴らすことはないはずなんだけど……」
育美さんの声が低くなる時は、彼女にもわからないことが起こった時だ。
私はとりあえず椅子に座り、次の言葉を待つことにした。
「……なるほどね。大量発生が起こったのはレベル22ダンジョン『
「ダンジョンの中に工場!? どうしてまたそんなところに?」
「一言で言えば『危険』だからね。まず、このエナジーの正式名称はダンジョンエナジーで、一般的には『
「それはなんとなく学校で習ったような……習ってないような……。でも、Dエナジー自体は安全な物質だと聞いた覚えもありますね」
「その通りよ。Dエナジーの元となる魔進石も、抽出されたDエナジーも、濃縮後のDエナジーも人体に害はないし、簡単に爆発したりもしない夢のような物質なの。しかし、唯一Dエナジーを濃縮する過程にのみ大きなリスクが付きまとう……」
「ど、どんなリスクですか……?」
「濃縮の加減を間違えるとドッカーンと大爆発する! 周辺を汚染するとか長く悪影響が残ることもなく、ただシンプルなエネルギーの暴力で周辺の物を一瞬で破壊しつくす! その破壊力に耐えられる物質はそう存在しないわ」
「そ、そんな危険な加工を行う工場をダンジョンの中に作るだなんて、ますます意味がわかりません!」
「そう、危険だからこそなのよ。ダンジョンの中にはモンスターはいても人間はいないし、ダンジョンの内部でどれほど大規模な爆発が起ころうとも、こちら側の世界にはまったく影響が出ない。工場内での作業はほぼオートメイション化され、人の手が必要な部分もDMDを使って行われる。つまり、最悪の事態が起こっても工場と数機のDMDが吹っ飛ぶだけで、人命が危険に晒される可能性はゼロってわけね」
「な、なるほど……! ダンジョンが異空間であることを逆手に取った安全対策ってわけなんですね。ただ、それを聞いてもダンジョンの中に工場なんて恐ろしいです。そこまでしてDエナジーを濃縮する必要はあるんですか?」
「うーん、私たちDMDを運用する人間としてはありありって感じね。Dエナジーは液体だから多く積み込めば積み込むほど、重量が増すしスペースも使うわ。さっきも言ったけど、DMDみたいにサイズが小さい割に機体を動かしたり、武器を使ったりするので多くのエネルギーを消費するうえに、遠隔操作による長時間の稼働が求められる機械には、濃縮された状態のDエナジーじゃないといろいろと都合が悪いのよね」
「重量とスペース……。アイオロス・ゼロとかモロに影響を受けそうですね」
「未濃縮のエナジーだと稼働時間が半分以下に落ち、稼働時間を維持しようと思えば総重量が増えて強みである機動力が落ちてしまうからね……。蒔苗ちゃんの言う通り、工場自体への危険度なら地上に作るよりモンスターが出るダンジョンに作る方が危険なのは間違いないわ。ただ、それは工場を所有する企業だって理解してるし防衛策も講じてある。マシンベース並のバリアに武装は当然として、腕利きのDMD操者たちで編成された防衛部隊による警備もあるから、そう簡単に工場が破壊されることはないと思うわ」
「それなら安心ですね! じゃあ、さっきのサイレンは工場があるダンジョンで大量発生が起こったことを知らせるだけで、特に危険なことは起こってないということですか?」
「いや、それがね……。今回はというか、初めてのことなんだけど……その工場から緊急事態を知らせるエマージェンシーコールが出されてるの」
「……え? ええっ!?」
「現在、防衛を担当していたDMD部隊が壊滅状態。残存戦力と工場のバリアおよび武装でなんとか持ちこたえている状態みたい。予備の戦力や非番の操者を緊急で呼び出して対応に当たってるけど、収束の気配はなし。よって、この首都第七マシンベースを出撃拠点とし、救援部隊を編成することになったわ」
……なんか普通に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます