-35- 変わらぬ友情と
「まってまって! 1個1個詳しく説明していくから、みんな落ち着いて!」
私はお爺ちゃんの葬儀から今に至るまで体験したことを時系列順に話していった。
要約したり、省略したりしてもすぐに質問が飛ぶから、最初から最後まですべて話す。
頑張りすぎて倒れたことまで話してしまったから、愛莉がすごく心配していたけど、これを隠して後でバレた方が怖いのでごまかしはしない。
「うおおおおおお……! 本当にあのアイオロスに兄弟機が存在したなんて! 量産型のディオスを生産する裏で極秘裏に開発されていたのか!?」
「会ったこともない孫娘に貴重なDMDを託す……か。うーん、気まぐれや偶然ってことはなさそうよね~。間違いなく誰かの意図が絡んでいる……!」
「とりあえず、戦いといっても蒔苗ちゃんに直接危険が及ぶわけじゃないとわかっただけでもよかった……。それでも、倒れるまで無理しちゃダメなんだから!」
話の後も反応は三者三様だけど、割と納得はしてくれているようだ。
隠し事を全部話して、私も清々しい気分になる。
やっぱ、正直に生きるのが一番幸せってね。
「なあ、マシンベースに見学とかしに行っちゃダメかな? 私、自分の目でそのアイオロス・ゼロを見てみたいなぁ……なんてさ」
芽衣は上目遣いで私を見る。
なるほど、そういう流れになるか……。
私はチラッと育美さんを見る。
瞬時に私の意図を察した育美さんが芽衣のお願いに答えた。
「マシンベースは予約さえ取れればいつでも見学可能よ。ただ、個人が所有しているDMDを見学したいとなると、その所有者の許可が必要になってくるわ」
今度は育美さんが私にチラッと視線を送る。
それに釣られて芽衣、芳香、愛莉もこっちを見る。
こうなったら、選択肢は1つしかない。
「なんかちょっと恥ずかしいけど……見ていいよ、アイオロス・ゼロ」
その瞬間、芽衣が歓喜の声を上げる。
DMDへの興味がここまで強いとは予想外だった。
このはしゃぎ方を見ると、学校で本当のことを明かさなくて良かったと思ってしまったり……。
「でも、実際に戦ってるところをリアルタイムで見ることは出来ないからね。というのも、ダンジョンはあらゆる……」
「通信手段を拒絶する。ダンジョンの外部から内部へ届くのは人間の脳波のみ。だから、ダンジョンの内部で繰り広げられる戦闘の映像をリアルタイムで外部に送ることは不可能……でしょ? でも、DMDのカメラが捉えた映像はすべてストレージに保存されているから、機体が無事に帰還すれば録画データを回収して戦闘の様子を確認することが出来る。姫は2回出撃しているから、2回分の戦闘映像があるはず。私はそれさえ見られれば大満足だから安心して!」
「う、うん……」
芽衣は新工学部志望だ……!
新工学とは、要するにダンジョン由来の技術を扱う工学部だから、ダンジョンとDMDについて私以上に詳しくてもおかしくはない。
いや、むしろ詳しくて当然と言える……!
「見学に行くことは確定として、日程はどうする~?」
「学校をサボるわけにはいかないし、放課後だと時間的にゆっくり見学できなさそう……。土曜日の朝とかどうかな?」
芳香が問いかけ、愛莉が具体的な案を出す。
そして、育美さんが見学の予約状況を確認する。
「土曜日の朝……うん、空いてるわね。9時30分からでどうかしら?」
特に異論はなし!
ということで、次の土曜日はみんなと一緒にマシンベースに行くことになった!
「土曜日にはアイオロス・ゼロの新装備が完成する予定だから、実際にダンジョンを探査するところは見られなくても、新装備のテストは生で見られると思うわよ」
「マジっすか!? やったー!」
「うふふ……期待しててね。蒔苗ちゃんがカッコいいところを見せてくれるわ」
「ちょ、ちょっと育美さん! プレッシャーかけないでくださいよ!」
「あははは! ごめんごめん!」
まだどんな装備が出来上がるのかもわかってないし、それをみんなの前で試すとなるとすっごい緊張しそうだ!
でも、新しい武器を試すワクワクの方がまだ勝っている気がする。
次の土曜日が楽しみだなぁ~。
「さあっ、そうと決まれば今日はみんなもパーティーよ! 蒔苗ちゃんのこれからの活躍を祈って乾杯してあげて!」
育美さんがみんなの前にコップを並べ、ジュースを注いでいく。
乾杯の音頭を取るのは、こういうことが一番得意そうな芽衣だ。
「では、萌葱蒔苗のさらなる活躍と、我らの変わらぬ友情……そして」
芽衣はそこで一度言葉を区切り、育美さんのグラスにお酒を注ぎ始めた。
みんながきょとんとする中、芽衣はこう言葉を続けた。
「新たなる出会いを祝して乾杯!」
芽衣は育美さんのグラスにコツンと自分のコップを当てた。
おおっ、なかなか粋なことをする……!
育美さんは驚いたような顔をした後、ちょっと恥ずかしそうな笑みを浮かべた。
「あ、あはは、私なんかが若い子の乾杯に混ざっていいのかな? ほら、歳だって10以上離れてるしさ……!」
「年齢なんて関係ありませんよ! 育美さんは私の憧れなんです! これからも仲良くしてください!」
「そ、そう? じゃあ……乾杯!」
それ以降、場の空気は一気に和やかになった。
微妙に育美さんを警戒しているっぽかった愛莉も普通に話すようになったし、芳香も隙を見てはボディタッチを試みている。
芽衣は専門的な話が多くて内容がよくわからなかったけど、一番打ち解けていると見て間違いないと思う。
一時はどうなることかと思ったけど、最終的にはみんなに本当のことを話せて、育美さんとの親交を深められたし結果オーライね!
「あ、そうだ! 私たち姫に手土産持ってきてるんだった! 私は……ほい! 姫が一番美味しいって言ってた『れっくう亭』の餃子! 普通のと、ニンニク抜き生姜入りと、ニンニクマシマシの全3種類が勢揃い!」
「私は『
「えっと、私は『
目の前に並ぶ料理はみんな私の大好物!
ラーメン屋や街の大衆中華は良いものだ……。
比較的お安い値段でたくさん食べられるから。
「みんな、ありがとう! 3人の力を合わせて豪華定食の完成ってわけね!」
「いや、それがさ……。私たち別になにを持ってくるか話し合ったわけじゃないんだ」
「それどころか、ここに来ることさえ誰にも言わなかったのに、ばったりマンションの前で会っちゃった感じなんだよね~」
「芳香ちゃんも芽衣ちゃんも中華料理を出してくるから、私ビックリしちゃった! どうしてこんなに考えることが被るんだーって!」
「まっ、それだけ私らが姫のことを想ってるってことさ! 存分に受け取ってくれよ姫! お腹いっぱいなら明日でも構わないけど!」
「食事時を過ぎたこの時間にガッツリ系の手土産はミスった感あるよね~」
「蒔苗ちゃん、無理しなくていいからね」
偶然手土産が被ってこの組み合わせになるのも驚きだけど、確かにこの時間帯に渡すものにしてはガッツリしていて重いことにも驚く!
でも、今日の私はまだそんなに食べていない。
育美さんにお酒をついだり、おしゃべりするのに夢中になっていたからだ。
用意した料理のほとんどは育美さんが食べてくれたし、むしろこの手土産はナイスチョイスなのかも……?
「大丈夫! 全部美味しくいただくわ! DMD操者は体力つけないといけないからね! あ、でも、欲しいものがあったら遠慮なく取っていってね」
もう夜ということもあり、5人のパーティーは短い間だけだったけど、私にとってそれはそれは楽しくて、大切な時間になった。
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