第一の難関

「で、そのフードフェスティバルにはどうやったら出られるわけ?」

「そりゃあ、主催者に聞けばいいんじゃねえの?」

「ふーん、誰に連絡すればいいの?」

「ちょっと待ってください! 確か、もう申し込みは締め切っているはずです」

 私とギルバートの会話を横で聞いていたエマさんが、ストップをかけた。

「ええ! じゃあ、ダメじゃない」

 まだ出るかどうかわからない状態だったけど、最初から『ダメ』と言われると、それなりにガッカリするものだ。

 場にガッカリムードが漂い始めたとき、ギルバートが、

「いや、出れるかどうかわからないが、方法はある」

 と言い出した。

「あんまり期待はしてないけど、一応、聞いておく。で、何?」

「主催者に直談判する」

 ああ、やっぱりこの男は……。

「主催者に直談判すれば出場できるんだったら、そもそも締め切りなんていらないし。それとも、主催者と知り合い?」

『バカじゃないの?』と付け加えたかったが、それはやめといた。

「まあ、主催者とは……知り合いっちゃあ知り合いだな」

「へ? 『支援者』様ってそういうところにもコネがあるだ、ふーん」

 聖女候補に関わるような重要な任務に就いているんだから、それ相応のコネを持っていてもおかしくない。

「で、結局、誰なの? その主催者って」

「ケインだよ。お前も知っているだろ?」

「ケインって……あのケイン様ぁ?」

 思わず声が裏返ってしまい、私は思わず口を押えた。

「そ、あの『ケイン』様」

(あ、無理かもしんない……)

 私は頭を抱えてしまった。


 ――ケイン様というのは、支援者の一人なのだが、超がつくほどの美食家で知られている。

 ケイン様を落とすには、ひたすら手料理を食べさせるというのがゲーム内での攻略法。で、私は、本当にその通りやったのだが、あえなく撃沈。ついでに、出禁を食らってしまったのだった。

 私は、料理が超得意というわけではないが、そこそこ食べられるものは作れるという自負はあった。でも、自分の料理の腕が、出禁を食らうほどのものだと認定されると、かなり凹む。

「そもそもケイン様は、カレーを食べてくれるどころか、私の話も聞いてくれないと思う」

「だろうな。ただ、アイツは超がつくほど食い意地が張っている。アイツの食欲に訴えかければ何とかなるかもな」











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楽勝なはずの乙女ゲームの世界に聖女候補として転生しましたが、攻略に失敗してみんなに嫌われたので、生きていくためにカレー屋で頂点目指します! 林 真帆 @maho551

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