マユケン 二つの雲

門前払 勝無

第1話

「マユケン」♯二つの雲


 青空に浮かぶ二つの雲は別々の方へ流れていったー。


 セパハンのSR400にはもう20年も乗り続けている。

 賢治はバイクを磨きながら長い付き合いだなぁと昔を思い出していた。


 過去の人付き合いで良い事は一つも無かった。家族であっても…人間は数種類しか居なくて、出会いと別れを繰り返してまた同じように独りになる。トゥルーロマンスという映画を観たときに微かな生きる希望を持った。必ず運命の人が居るはずと…賢治の生きる意味でもあり、価値でもあると思ったのである。

 昔と違って携帯電話やインターネットがあるから、出会いと別れが簡単である。

 嫌なら電話に出なければそれで終わる。

 例え誤解であっても縁が切れてしまうのである、切ってしまうのである。

 賢治は良いことも悪いことも相手に本音で伝えないといけないと思っている。それによって苦行の人生なのだが、曖昧な人付き合いに意味も価値も感じないのであるー。


 賢治の人生は周りの誤解や騙しに晒されてきた。やっても無いことで逮捕されたり、誤解によって友人が居なくなったり、付き合ってきた女も消えていったり消えたりと…。

 それでも賢治は運命の人が現れるはず、その時のために全力で誰にでも本音で向き合っていこうと決めている。


 そう言いながら今年で40歳であるー。


つづく

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