第32話 プライベートビーチ2
階段を降りてくる北条さんを見て俺は思わず息を飲み、固まってしまった。
白い髪と肌を浮き立たせる黒色の、パンツ部分を二枚重ね着したいわゆるレイヤード・ビキニを着て、うえに透明感のあるシャツを羽織った北条さんはとてもセクシーさを醸し出していた。
普段北条家にいる時、北条さんはめったに肌を露出することはなく真夏でもパジャマは長袖のネグリジェを着ている。そんな北条さんが、ビキニタイプの水着を着て肌を露出させている上に、レイヤード・ビキニがよりセクシーさを高めていた。
さらに、これまた普段服装がしっかりしていたため気づかなかったが、北条さんも小柄だからなのかとても大きく感じる果実を胸に実らせており、とても色っぽく魅力が溢れていた。
「どうよ。可愛いでしょ」
「う、うん……」
千秋さんの誇らしげな言葉でようやく動き出した俺は、まだ戸惑いながらも頷く。
「ありがとうございます。それでは皆さん行きましょう」
その言葉に千秋さんが「ほら、行こう!」と言って涼の腕を引っ張って先に出て行く。
俺も後に続こうと荷物を持って追いかけようとした時、北条さんに声をかけられる。
「修くん。どうですか?」
「ええっ!」
まさかそんなことを、しかも名前呼びをされて、聞かれるとは思わず振り返ると、目に映ったのは俺を揶揄うときの小悪魔的な笑顔を見せる北条さんだった。
「あ、ああ。か、可愛いよ」
「ふふ、ありがとう。ほら行きましょ」
さっきの衝撃からまだ若干立ち直せていなかった俺は急に聞かれ、返事が戸惑ってしまった。
戸惑っているのを気づかれたのか、ふふっと笑った北条さんは軽やかに外に出て行く。
リビングに残されたのはただ一人負けして顔を赤く染めた俺だけであった。
ようやく平常心に戻った俺は少し遅れて皆を追いかけ、ビーチにいく。
「おーい修!遅いぞ!」
「すまーん。ちょっとトイレ行ってたわ」
ビーチに向かっている俺を見つけた涼が俺を見つけて声をあげる。
そんな涼は千秋さんと北条さんと一緒にパラソルとデッキチェアを用意していた。
「ん?それって……」
「ああ、これ。使えるかなって思って。別荘にあったやつだけど」
北条さんが俺が持ってきた物に気が付く。
そう俺が持ってきたのは浮き輪とスイカ柄のビーチボールだ。
実は今朝、梓さんに物置に入っていると言われて、出てくる時空気入れで膨らませて持ってきたのだ。
「さて、準備も終わったし早速行こうよ……あっ!ちょっとまって!」
ビーチに拠点を作り終えた俺たちは海に入ろうと上に羽織っていたものを脱ぐ。俺と涼は上に来ているのはラッシュガードだから本来、脱がなくても良いのだが、あまりにも暑いので脱ぐことにした。
北条さんと千秋さんも上のものを脱いで、いざ海に入ろうとした時、千秋さんが慌てたようにストップを掛けた。
「ん……どうした?」
俺たち3人が急に声を上げた千秋さんに疑問の顔を向け、涼は声も掛けた。
「あの……日焼け止め……塗り忘れちゃった」
何か重大なことが起きたのではないかと言う可能性を思い浮かべていた俺たちは、それほど深刻なことではなかったため安堵する。
いや、女子にとっては深刻なことなのかな。
そんなことを思っていると涼が千秋さんのところに行く。
そして持ってきた日焼け止めを渡す。
「ありがとう……あ、でも背中届かないから塗ってくれる」
「もう、しょうがないな。ほら貸して」
すると千秋さんは涼に日焼け止めを渡すと背中に上から両手を回したかと思えば、トップの紐を外した。
「はぁ!?おい、俺が見てるんだぞっ!」
いきなりトップを外し始めた千秋さんに驚き、俺は思わず声を上げ、後をバッと振り向いて。
「あはは……ごめん。つい」
「つい」ってことはいつもやってんのかよ。クソッ……このバカップル!
「もう千秋、しっかりしてよ」
「ごめんって……あ、修くんもういいよ」
「ほんとに大丈夫か」
「うん……もういいよって、ごめんね……あはは」
笑いながら言う千秋さんに不安になりながらも「いいよ」と言われている以上振り返らないのもおかしいため、恐る恐る振り返ると、敷いてあったビーチマットにうつ伏せになっていた。
これはこれでダメじゃないか……横ちt……まっ、いいっか。
友人に対してすまないと思いながら腕を組んで、そんなこと考えていると隣から腕が伸びてきて、俺の二の腕を突っつかれた。
その腕の持ち主は思っていた通り北条さんだったが、なぜか予想と違って恥ずかしそうに目線をずらしていた。
「あの……実は私も塗り忘れていて……」
「あ、ほんと。俺持ってるから貸そうか?」
「いや……日焼け止めは持ってるんだけど……背中が……塗りにくくて……」
それを聞いた瞬間「マジか……」と呟きながら天を仰ぐ。
今ならカエサルに共感できるぜ。
「
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