第10話 龍皇学園入学式1
真新しい制服に身を包んだ俺は、北条一家と車に乗って移動している。
そう、今日は高校の入学式。俺たちが向かっているのはこれから俺と北条さんが通う私立龍皇学園。
入学式という事で克人さんは高級そうなスーツ、翔子さんは白のドレスを着て一緒に車に乗っており、今は何やら会社のことを二人で話している。
北条さんはというといつも通り本を読んでいた。
一方俺は一応本は鞄の中に入れて入るが読む気にはなれなかった。
何故かって?少し緊張してるからさ。入学式に対してではない。別にそこまで人見知りというわけではないからな。じゃあ、何に対してかって?この車に乗っている事に対してさ。
は?と思うかもしれない。でもこれを聞いたら納得してくれるだろう。ただの黒塗りのベ◯ツとかの高級車ならそこまで気にしないさ。
でも俺たちが今乗っているのは黒塗りのリムジンなんだ。前に運転席と助手席があり今は運転手がハンドルを握っている。そして壁に挟まれた後ろにはまず二つ前向きについている純皮でできた椅子があり、そのうちの一つに梓さんが座り何やらタブレットを弄っている。
その後ろには同じく純皮のソファーがコの字型についており、進行方向向いて右側に翔子さん、右側に克人さんが座り、後ろに俺と北条さんが座っている。
ここまで聞いてどこに緊張を覚えるんだと思っただろう。忘れてはいけない一週間ちょっと前まで俺はボロアパートに住んでたんだ。普通の車にも乗れなかったやつがいきなりリムジンだぞ。さらにこのふかふかのソファー。ふかふかすぎて沈んでいるんだ。みんなは座り心地がいいと思うかもしれないが、俺にとっては逆に座り心地が悪い。
まぁ、簡単に言うと高級すぎるって事だな。俺にとってはもう少し安いものの方が落ち着けるぜ。
そんな事に緊張しながら車に乗る事30分、塀に囲まれた大きな敷地の横を走っていたかと思うと、突然曲がり、門を通って敷地の中に入っていった。
「旦那様、そろそろ到着いたします」
運転手さんが克人さんにそう報告した。
「うむ、分かった。よし二人とも準備して着くよ」
そして車は二階に入口があり、階段が伸びている建物の前に止まった。
そして運転手と梓さんが扉を開けてくれ、俺たちは車を降りた。
ここで過ごしていくんだな。
眩しい太陽の光に目を細めながら周りを見渡したその時、建物の中から大人の人が出てきたこちらの方に歩いてきた。
「新入生と保護者の方ですね。まずはこちらにどうぞ」
そう言って案内するように歩き出した。
「旦那様、我々はここで」
「うむ」
運転手さんと梓さんは克人さんの返事を聞いて車に乗り、克人さんはそれだけ言って、案内の人の後について行った。そして翔子さんと北条さんも歩き出し、俺も慌てて地面に置いていたリュックを持って、追いかけるだった。
俺たちがまず案内されたのは少し大きめの会議室のような部屋で、中央に何やら名簿のような物が置かれた机が置いてあり、先生が二人机の前に立っていた。
「ご入学おめでとうございます。お名前は?」
「北条陽葵と如月修です」
ここは入学式の受付らしく、まず名前を聞かれたが克人さんが俺たちの代わりに答えてくれた。
「はい、ありがとうございます。まずは軽く説明させて下さい。まずクラスは一
学年1組から8組の8クラスあり、一クラス40人前後です」
へぇ。て事は、人が一学年320人前後か多いな。
「えっと、まず北条陽葵さんは1組ですね」
クラスについて説明してくれた人ではなく、なんかの紙をずっとみていた人が言
った。多分名簿だろう。
というかもうクラスが決まるのか。まだ友達もいないから誰と一緒がいい、とかはないけど優しい先生のクラスがいいな。
「如月修くんは、えっと、あった。如月修くんも1組だね」
わぉ。なんたる偶然。まさか北条さんと同じになるなんて。64分の1を当てるなんて。なんか仕込んだみたいだな。
そう思い克人さんの方を見ていると、俺の視線に気づいたのかこっちを向いてきて、俺と目があった瞬間ニコッと笑った。
あ、なるほどね。察しましたわ。さすが四大財閥ですね。
「それではそこの階段から上がって講堂に入って下さい。入口に係員がいるので
係員の指示に従って下さい」
北条家の力の片鱗を見て少し恐怖を感じながら、先生の指示通りに俺たちは入学式の会場となる講堂に向かうのであった。
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