3−11 襲撃
1人になった途端、突然背後から腕が伸びてきて羽交い締めにされた。
「!」
だ、誰っ?!
叫ぼうにも口を手で強く押さえられて声を出すことが出来ない。手の大きさや腕の太さ、そして何より力強さから私を押さえつけているのは男だということがすぐに分かった。
「んーッ!!」
必死でもがいてもふりほどけない。口元を手で強く押さえつけられているため、呼吸もあまりままならない。
いや…こ、怖い!私…また殺されてしまうの?
「おとなくしくしろ」
突如男が耳元で口を開いた。
「!」
その声には全く聞き覚えが無く、さらに私の恐怖心を煽ってくる。
「ありがとう、捕まえてくれたのね」
突如背後から女性の声が聞こえてきた。
「ああ、お前の言う通りつかまえてやったぜ。丁度男がいなくなって1人になったからな」
「んんーっ!」
必死でもがくと女性が言った。
「もういいわ。離してあげて。ただし逃さないようにね」
その声に男の手が口元から外され、羽交い締めにされていた身体を離された。
身体の自由が戻ったので、慌てて振り向くとそこには見慣れない若い男が立っていた。背はそれほど高くは無かったが、かなり筋肉質な男であることが分かった。
「だ、誰…?」
声を震わせて口を開いた次の瞬間、右腕を強く掴まれた。
「い、痛い!」
「おっと、逃げようとするんじゃないぜ?逃げたらただじゃすまないからな」
男は乱暴な口調でますます強く腕を強く握りしめてくる。
「い、痛い…お願い、離して…」
「離したらお前逃げるだろう?」
「その手を緩めなさい。怪我させたら厄介だから」
その言葉に男の腕が少し緩んだ。私は改めて男を見た後、命令した女性を見た。
やはりその顔には見覚えがある。
「さあ、怪我したくなかったら魔石を私達によこしなさい?」
身なりの良い服を着た貴族令嬢は私に言う。
「あ、貴女はこの男性と組んでいるの?」
令嬢が男と2人きりなのが気になった。
「そんな事聞いてどうするの?いいえ、他に3人の仲間がいるわ。」
令嬢は長い髪を左手で払いながら言った。
「彼女たちにはちょっと用事があるからと言って今別行動取ってるのよ。この男は私の…」
令嬢が言いかけた時、男が言った。
「おい!あんたの言う通り、この女を捕まえた。早く金くれよ!」
その言動や態度から、男はあまり頭が良くはないのかも知れない。何しろこんなエントランスで大きな声を張り上げるのだから。
「今は手元に無いから後であげるわよ」
すると男は言う。
「いや!いまよこせ!あんた達貴族はすぐ嘘をつくからな!」
「そんなこと言ったって今金目のものは持ってきていないわよ。後で何処かで待ち合わせしましょう。それよりもまずその女から魔石を奪ってからよ」
令嬢に言われ、男は私の方を振り向くと言った。
「さあ、魔石を俺に渡せ。」
男は血走った目で私を見る。
「わ、私は持っていないわ」
私は魔石に触れることが出来ないのでユベールに預けてある。
「嘘をつかないで!貴女は魔石を見つける事が出来るのだから持っているはずよ!いいわ。その女が魔石を持っていないか探して頂戴!」
令嬢はとんでも無いことを言ってきた。
「ヘヘ…悪いな。調べさせて貰うぜ。」
突然男の腕が私の服に伸びてきたかと思うと次の瞬間
ビリッ!!
突然胸元を破かれた。
「い、いや!」
突然服を破かれて一気に恐怖が身体を駆け巡る。
「ちょ、ちょっと!あんた何してるのよっ!!やめなさい!」
令嬢が焦ったように男に言う。
「うるせえっ!あんたが探せって言ったんだろう?!」
男が下卑た目で私をみる。逃げようにも腕を掴まれて逃げられない。第一恐怖で足がすくんで逃げられない。そして再度男が私の着ている服に手を掛けた時…。
「やめろっ!!」
エントランスにユベールの声が響き渡った―。
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