3−1 ユベールの呼び出し

 翌朝―


ドンドンドン…!


部屋の外でひっきりなしにノックの音が聞こえている。う〜ん…うるさいな…。

ゆっくり目を開けると、今度はノックの音以外に私を呼ぶ声が聞こえてきた。


「シルビアッ!おい、大丈夫かっ?!返事しろっ!!」


それはユベールの声だった。あまりにも切羽詰まった声だったので一瞬誰の声なのか分からなかった。


「え?ユベール様?!」


慌てて飛び起き、ベッド下の室内履きを履くと扉に駆け寄ってガチャリと開けた。


「シルビアッ!!」


ユベールの顔には焦りの表情が浮かんでいた。そして私の両肩を掴むと言った。


「良かった…!無事だったんだなっ?!後3回呼んでも部屋から出てこなかったら扉を無理にでもこじ開ける所だった…え?お、お、お前…な、何て格好してるんだ!」


突然ユベールが顔を真っ赤にさせて私を見た。


「え?格好?」


言われてよくよく見てると、私が着ていたものは夜着ではなく、バスローブ姿だったのだ。胸元は大きくはだけて、大事なところまで見えてしまっていた。



「え?!キャアッ!も、申し訳ありませんっ!!」


慌てて背中を向けて胸元を直した。ど、どうしよう!ユベールに見られてしまった!何て失態を犯してしまったのだろう。そう言えば…昨夜はあまりにも疲れていたのでシャワーを浴びた後、バスローブのまま眠ってしまっていたのだった。


「い、いや…そ、それより何故お前が謝る?む、むしろ謝るべきは俺の方ではないか?」


ユベールが背中を向けて尋ねる。その耳は真っ赤に染まっている。


「え、ええ…それはお見苦しい姿を見せてしまったからです…」


そうだ、きっと全く興味のない女性の胸元を見せられてもきっと不快なだけだろう。だってユベールがこの世で関心のある女性はジュリエッタだけなのだから。


「一体何をいってるんだ…お前は。い、いや!それよりもまずはその格好を何とかしてこい。俺はここで待っているから」


「わ、分かりました!」


返事をすると急いで私は自室へ戻り、クローゼットを開けた―。




それから約20扮後―。


「すみません、お待たせ致しました」


簡単に身支度をし、青いワンピースに身を包んだ私は部屋の外で待っていたユベールに声をかけた。


「ああ…」


ユベールは私を上から下まで見下ろすと言った。


「その格好…」


「え?」


「あ、青色なんだな」


そしてフイと視線をそらせた。


「は、はあ…」


ユベールは当然の事を言う。何が何だか訳が分からず首を傾げた。


「それより、早く来い。朝食の時間が終わってしまうぞ?時間になってもお前が現れないから、俺がお前を呼びにきたのだ」


歩き始めるとユベールが言った。


「え?わざわざユベール様がよびにきてくださったのですか?」


「ああ、そうだ。お前友達がいないだろう?その証拠に誰もお前を呼びに来ようとはしなかったからな」


うっ!ユベールは真顔で中々鋭い事を言ってくる。だけどこんな状況で友達を作れと言う方が無理なのでは?だって全員がライバルなのだから。まして私は誰ともグループを作っていないのだ。だけど、友達が全くいないのはむしろユベールの方なのでは?

だからつい、言ってしまった。


「ユベール様、確かにここでは友人はいませんが、地元に帰れば友人は沢山いますよ?これでも私は中々人気者ですから。男友達だって大勢いますし」


すると何故か突然ユベールが足を止めた。


「何だって…?男友達だって…?」


妙に迫力のある目で私を睨みつけるような目で見つめてくるユベール。それにしても何故ユベールはそんな目で私を見るのだろうか?まさか…妬いている…?


「あ、あの…ユベール様…」


すると、ユベールがハッとした顔になり、再び背を向けると歩き始めた。


「と、とにかくお前はアンリ王子の婚約者候補でここへやってきたのだ。むやみやたらに他の男の話をするな」


ああ…なるほど。そういう事なら…。


「はい、分かりました」


私は素直に返事をした―。












 

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