第9話 お前は誰だ

 「今日も今日とて買い出しか。」

 あの日から数日経った訳だけど、特にあれからは進展がない。

一つあるとしたら結局イレーネを家に泊めてることかな。なんかバディってやつらしいし。

 スキルに関してなんだけど、今の状態だとスキルを獲得できない。予想だけど、条件ってのがあると思っている。

 例えば火に触れてたら「火耐性」獲得できるようになるとかさ。

 ん?俺のことを誰かが呼んでる。

 「おっ、イレーネじゃん!一緒に来るなんて初めてだな。」

 「そうだろう?たまには着いて行こうかなって思ってよ。」

 ん…?なんか普段と口調が違うな。こういう男勝りの話し方もするのか…?

 「まあ、ついて来てくれるならありがたいな。俺には量とかよく分からんから、そこんとこ任せるわ。」

 「えー!お前が選んでくれねぇのか?」

 「俺が選んでもつべこべ言われちゃうからさあ。どのくらいのが良いか見ておきたいし。」

 「それじゃあもう着いてこないぞ?」

 「うぅ…それならそれでもいいよ。」

 そう話しているうちに店の前に着いた。

 「あ!今日って何買うって言ってたんだっけ、忘れちゃったよ。」

 「なんだよ、忘れたのかよ。メモも書いてないのか?」

 「あ!そうか!メモがあれ…ば…あれ?ポケットに入ってない!」

 「何やってんだ。全くだらしないな。」

 「ごめん。だからさ、代わりに選んでくれない?」

 「お前、それを狙ってたのかよ!」

 「いや、本当に無いんだって信じてくれよ。」

 「おい、じゃあジャンプしてみろよ。」

 「え?ジャンプ?」

 「ああ、そうだ、出来ねぇのか?」

 「いや、出来るけど…」

 そう言って俺はジャンプをした、

 「音もなんねぇし、本当らしいな。」

 「これで俺のこと信じてくれた?」

 「信じるしかなくなっちまったな。そうだ、今日買う野菜がどんなのか思い出せるか?」

 「えっと…なんか丸い感じのやつだった気がするな。」

 「おぉ、丸いやつだと思ったか。それじゃあ答え教えてやるよ。」

 「ありがとうございます、姉貴!」

 「コイツが答えなんだぜ!」

 そう言ってイレーネが指差したのは桃だった。

 「あ!そうだった!桃だったな!」

 「これくらい覚えろってことだ。」

 やっぱりな、コイツはイレーネじゃない。実のことを言うと今日の材料は覚えている。

 自分がやばい状況になっているのも分かる。ときかくここから逃げる方法を考えなければ…ここは賭けてみるしかない!

 「ご、ごめん、腹痛くなってきたからトイレ行ってくる、ここで待ってて。」

 「そっか、気をつけて行って来いよ。」

 俺は全速力で走った。メロスよりも早く走れた気がする。それほど全力だったんだ。


 「はぁ、はぁ、やっと家に着いた…」

 心臓がバクバクなってる。体全体も脈を感じている。

 それでも、俺は家に帰って来れたんだ。

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