第7話

 少し前に言った、白猪堵荘の意味を調べるために私たちは図書館に来ていた。雨上がりでひたひたに濡れたコンクリートの匂いがむっとしていた。


 パソコンコーナーへ行き、伯生さんが座った。カタカタと打ち始めたと思ったら、

「ん? これカナで打つにはどうすればいい?」

「あ、そういう世代なんですか?」

「そうだよ悪いか」

「何も言ってないじゃないですか……」

 すぐにカッとなるんだから。

 で、カナ入力にしてあげて、伯生さん主導で調べる。


『白猪』はそのまま、白いイノシシ。二月に祭られることもあるそうだ。

『堵』が、なかなか難しい。

「垣根」の意味があるらしい。それに合わせて「安全に暮らす」「防ぐ」「さえぎる」といった意味があるんだけど、『白猪』で『安全に暮らす』と、『白猪』を『防ぐ』『さえぎる』だったら意味が真反対になる。

「前者で解釈したほうがよさそうですね」

 伯生さんに言ったけど、彼は渋い顔をしている。

「そう思いたいが、多分……」

 何も言わなくなった伯生さん。言葉的に、否定するつもりなのだと思うけど、何でそうネガティブに考えるのかな。


 不安にならないのかな。


 微妙に気まずかったけど、その後は特に何もなく、私たちは家に戻った。

 途中で伯生さんがくしゃみをして「あー寒い寒い」って言ってたけど、いまは夏だし、めちゃくちゃ暑い。

 変なの。

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