どうやら最強達が戦うそうですよ?

朝乃雨音

プロローグ

 昔、平和を求める一人の男が居た。

 男は平和を求め、平和を愛したが平和が実現する事は無かった。

 平和を作るために男は魔術を作り上げ、力を手にした。そしてその力で争いをなくそうとしたのである。しかし、力を得ても争いは無くならず男は絶望した。

 争いは争いを呼び人の恨みは消える事が無く、力を手にした男は確かに戦争を終わらせたが、人々に恨まれたのであった。

 その恨みを利用し人々は再び争いを起こす。敵を作り続け、争い続けたのである。

 男は人の愚かさに絶望し、人の欲深さにあきれ果てたのであった。

 誰よりも平和を愛した男は人に裏切られ、生涯を全て使い果たしても平和を実現させる事は出来なかった。

 だが男は諦めず、魔術を使い自らを未来に転生させようとしたのである。

 最強の魔術師となった男は自らに恨みを集め死んだ。男が死ぬ事により作り出された平和は確かに存在したがそれも一瞬であり、人々はまた争いを始める。



 そして数百年後の現代。一人の少年が争いの絶えない世界に現れる。

 少年の人生はまさに平凡そのものであった。

 少年が生まれたのは石川県の温泉街である。

 家は決して裕福とは呼べなかったが、不自由は無く、幸せな生活をおくっていた。しかし、少年はその生活に物足りなさを感じるようになった。代わり映えの無い日常を悪と思うようになっていたのだ。

 彼は徐々に変化を求め、自らの生活に刺激を求めるようになった。そんな時だった。十六歳の頃に親が転勤する事となり、家族で東京に引っ越す事となったと知り少年は歓喜する。東京と言う日本の中心とも呼べる場所に住む事となれば日常に退屈を感じる事も無くなるだろうと彼は思っていた。

 だが、半年もすれば生活は日常と化し、退屈が少年を襲った。

 その頃から少年は自ら混乱の渦中へと身を投じるようになった。

 学校内での争いから学校同士での争い、果ては暴走族の争いにまで顔を突っ込むようになる。

 そして新宿を活動拠点にしているチーマー集団に訳あって追われている最中に少年は一冊の本を見つける事となった。

 本は神の作りし産物であった。

 この世界の全て、叡智が詰まった産物。

 それが少年の拾った物であった。

 この世には存在してはいけなかった代物。では何故それがこの世界に存在し、少年が拾う事となってしまっているのか。全ては平和を望む魔術師の計画であったのだ。

 本を拾う事で少年の見て来ていた世界は変貌をとげ、やがては世界を巻き込む戦争の中心に立つ事となる。

 少年は未だ知らないのである。

 少年の血に、神にもっとも近づいた魔術師の血が混ざっている事を。

 全てが平和を求める魔術師による必然の事象であった事も。


 少年、秋山零士あきやまれいじは未だ知らないのであった。


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